月が満ちる夜に君と

@hakuno_12

プロローグ

些細な喧嘩で君と別れてしまってから数十回目の月が満ちる日、

僕は君と名前の似た「夜ノ月」のライブに参加する予定だ。

ライブ会場は心斎橋にあるライブハウスだ。

地方に住んでいる僕は夜行バスで大阪まで向う予定にしている。


夜月、元気にしてるかなぁ。


夜行バスを待っている時、僕は心の中で3年程前に喧嘩別れしてしまった大好きな人を思い出していた。


そうだ、夜月まだあのゲームやってるのかな。


そう思いながら僕は「パレット」という5対5の対人ゲームを開いた。

この「パレット」こそが僕と夜月が出会ったきっかけだ。

このゲームはバトルゲームとは別にSNSとしての側面も持っている為、色々な人をフォローして投稿を見たり一緒にバトルをしたりすることが出来る。

僕はプレイヤー名検索の欄で「セレナ」と入力した。

セレナとは夜月のゲームでのハンドルネームだ。


「セレナーデ(小夜曲)」が元ネタだったっけ確か。


そんなことを考えながら検索でヒットした人を順番に見ていく。

見つけた。このプロフィールは紛れもなく夜月だ。


まだこのゲームやってたんだ。


僕は意外に思いながらフォローのボタンを押した。

丁度その時、夜行バスがバス停に入ってきた。

バスに乗り込み、自分の予約していた席に着席した。


明日の「夜ノ月」のライブが終わるまでにもしフォローが帰ってこなかったらフォローを解除しよう。


そう心に決めながら闇夜を割いて進むバスの中で僕はその闇に溶け込むように眠りについた。

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