ニセモノ王女、王妃になる

あおじ

オードリー


 エリュティア王国、貧民街。

 母を病気で亡くして孤児となった少女・オードリーは夕食の為に今日もごみ箱を漁る。



 腐りかけの林檎とカビの生えたパンを腕へと抱いて小屋へと戻ると、豪勢な意匠の馬車がとまっていた。

 赤色と金色のピカピカと光るそれに思わず見とれていると、扉が開いて何者かが優雅に降りてくる。


 それは赤いドレスを纏い、頭にティアラをのせた少女だった。そしてその少女の顔を見てオードリーは驚きのあまり固まってしまう。

 オードリーとその少女の顔がそっくりだったのである。顔だけを見たら、まるで鏡合わせのようだ。


 オードリーに気がついた少女の方も驚いたような素振りを見せ一瞬だけ身を硬くしたが、直ぐに歩きだす。少女はオードリーの目の前までやってくるとにっこりと笑う。


「まぁ、貴女! 本当にわたくしにそっくりでいらっしゃること! すごい、すごいですわ!」


 少女はぽかんとしているオードリーに構わず続ける。


「わたくし、貴女にお願いしたいことがあってこうして参ったのですわ」


 貧乏で非力な自分に、裕福そうなお嬢様が一体何を願うというのか? オードリーはもうわけが分からなかったが、話を聞く為にとりあえず少女を家に招き入れるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る