鯛焼きの端っこに餡子は。

吉高 都司 (ヨシダカ ツツジ)

第1話 さて、はなしを始めようか。

交差点で、半身イーゼルを立て掛け水彩画を描いている。

月は。

いや、月に似た者。

海月のそれは、ただ揺蕩う。

旅する人が、イーゼルの御仁に問う。

「ここはいかほどの標高かね?

イーゼルの狂人は?」

イーゼルの狂人は。

思いあぐね、水彩の色をただ大地に落とす。

もう一度、旅する人が問う。

「ここはいかほどの深さかね?イーゼルの狂人は?」

パッと、明るくなったのも束の間。花火がそこここに、いや、花火であって。

大地に落としたそれではないか。


御仁は、旅人に反問する。

「あちらの違いと、こちらの違いは、月と花火の違いの答えが一緒である証明は、いかほどであろうか。」


イーゼルの置いてある、交差点では小人と岩と炭酸カリウムがどこにもないと、次の旅人に溶いて回って。


じゃあ溶接は。

狂人のイーゼルを持ったまま水彩の絵具が混じって黒となり。

待っている停留所の、椅子が交差点まで迎えに来た。

バスは、バスは、いつ来るや。

問いかけていた、狂人は、イーゼルを、立て掛けたまま月に向かう。電車と、汽車が交差点に進入した。

「ここはいかほどの標高かね?イーゼルの狂人は?」

時刻表は多分ここには無く。

持ってくる、タイヤの後ろに待っていれば張り付けている。

笑いと、悲しみの接合部分は月と海月と、硝煙が混ざり合えば。

反問した答えが、鶴と苗床が胞子を飛ばす。

交差点の半身はきっとタクシーと無限軌道で遠くに、近くに上に。

問いかけられていた狂人は、手を止めていたが再び絵具を、大地に溶かし、交差点を交差点たらしめた、何故なら。

電車も草履や靴も貨幣もきっと海月と波が混ざり合い。

どうしてもこたえが欲しかった。

どの答え?

この答え?

あの答え?

「御仁は、お腹が空いておりませぬか?」

イーゼルの狂人は雑巾をしがんだ。

「御仁、御仁その問いはなりませぬ。怒りが、終着が一向に見えませぬ。いわゆる何ごとでありましょうや。」

頼めば怒り、下げれば狂う。

さて。

さて。

交差点は、相手もされなくなったので、歩行者はきっと炭酸カリウムの上に乗って、通貨はほとんどバスタオルの様になってしまった

記録はどうだ。

答えをみたイーゼルにようやく色が付いた。半身の色が。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る