第49話 密談
その後、午前中の授業が終わる。
二年次なので特に説明などはなく進んだが、幸いにしてそんなに難しいことはなさそうだ。
簡単な地理や国の成り立ちなど、それらは当主として覚え……いや、オイゲンに叩き込まれた。
本格的な授業は明日からということだが、恐らく問題はなさそうだ。
「アイクってば、教え甲斐がありません」
「すまんな」
「い、いえ、賢いのは良いことですし……でも教えたいです」
「前も言ったが、いずれは教えてもらうさ。では、セレナは生徒会か?」
「はい、お昼を用意してくれてるみたいなので早めに行かないと……」
「なら早く行くと良い。俺は学食で食べてから部活見学に行くとしよう」
教室でセレナを見送り、俺も席を立つ。
ちなみにだが、俺達に話しかける者はいなかった。
嫌われてるわけではなく、どう扱っていいのかわからないといった感じだ。
ひとまず大人しくしてるのが無難だと判断した。
廊下を出て一階に向かう途中で、目的の人物に遭遇する。
「いたか」
「はい。では、私は予定通りにセレナ様の護衛に」
「ああ、頼んだぞ。お主なら俺がいけない場所も一緒に行けるはず」
「御意」
その短いやり取りで、数秒ですれ違う。
赤髪をポニーテールにした女子生徒……それは俺の隠密部隊であるレネだった。
これで裏のセレナの安全も確保した。
後は表で俺が目立ち、敵の目を引きつけよう。
そのまま歩いて食堂に入ると、こちらは大学の学食のような感じか。
上に貼ってあるメニューから選び、おばちゃんに話しかける形だ。
「記憶を取り戻したから和食が惹かれるな。というか、世界観が……いやいや、そんなこと考えても仕方ない」
「おいおい、何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「なんだ、キュアンもいたのか」
俺に肩を組んできた男、それは俺を牢屋から連れ出した友キュアンだった。
同じ学校なので、そのうち会うだろうとは思っていたが。
こちらも学校で会うべき目的の一人だ。
「かぁー、冷たい奴だ。まだ借りを返してもらってないのに」
「その件に関しては感謝している。何かあれば、俺でよければ力になろう」
「お前を頼る時なんざ荒事じゃねえか……そんなことになる前に気をつけるぜ」
「それが一番だ」
そのまま二人で列に並び、各々好きな物を頼む。
俺は親子丼と蕎麦、キュアンはハンバーグにしたらしい。
俺は勝手がわからないので、キュアンの後について窓際の席に着く。
そこは死角となっており人が少なく、会話を聞かれる心配もなさそうだ。
「んで、手紙はもらったが俺は何をすればいい?」
「王都の情報が欲しい。後は学校内の権力図や派閥などがあると助かる」
「おっけー、それくらいなら簡単さ」
「助かる」
「いいってことよ」
そう言い、俺の肩をポンと叩く。
我ながら、俺は良き友を持った。
この借りはいずれ返さなくてはな。
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