読者の一人として拝読しながら、作者は現在のネット小説プラットフォームの風潮そのものを、やんわりと皮肉っているのではないか、と感じました。これほど多くの異世界転生作品が存在し、もしその設定がすべて現実になるとしたら、異世界も結局は人であふれ、もう一つの地獄のような場所になってしまうのではないでしょうか。
現代人は異世界転生という題材に現実逃避の夢を重ねがちですが、実際に異世界へ行ったとしても、必ずしも楽になれるわけではありません。むしろ、初期の代表的な異世界作品である『Re:ゼロから始める異世界生活』のように、主人公が何度も死と選択を繰り返す過酷な状況に置かれる物語もあり、異世界が決して楽園ではないことを思い出させます。
本作の主人公もまた、そうした現実をどこかで理解しているからこそ、あえて勇者にならない道を選んだのかもしれない、と私は感じました。
そして個人的に最も驚いたのは、この作品に広告がまったく入っていない点です。ある意味、それこそが本当の「勇者」なのかもしれませんね……。