テンプレも学べ

 テンプレも学べと言われて、おそらく多くの方がすぐに、「なるほど、やっぱりそうだよな」と納得したかと思います。


 小説家ならみんな、無意識か意識的にかは知りませんが、大なり小なりテンプレの重要さには気づいています。

 テンプレがあるからこそ、「テンプレを守らない斬新な物語」は斬新たりえるし、読者の予想を裏切るという技も成り立つ。良い物語、良いキャラクターのすべてはテンプレを土台に出来ている。


 このことは、どうですかね、もう自明と扱ってもよろしいでしょうか。


 はい、扱います。自明とします。

 

 じめいぃ~!(世界に煽るように宣言した)


 もし、今初めて聞いた、という方がいましたら、おなじみフィルムアート社の『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』や『きちんと学びたい人のための小説の書き方講座』で紹介されている、「同じものだけど……ちがった奴をくれ!」を一読していただけたら理解できるかと思います。

『きちんと学びたい人のための小説の書き方講座』はカクヨム内で無料で読めますので、ますはそちらをオススメします。

https://kakuyomu.jp/works/1177354055193794270/episodes/16816452221378730133


 さて、「テンプレも学べ」を自明だとした上で主張することは、たった一つです。それも、限りなく狭い範囲に主張をねじ込ませます。


 どういうことかと言うと──現環境のいわゆる“なろう小説”に文句を言いたいのです!


 これから人によってはかなり心に刺さることを述べます。不快に思うかもしれません。なので、先に謝っておきます──ごめんなさい!!

 まあでもー、ゆーて素人の雑な考えなのでぇー。ええ、あしからず。反論はいくらでも受け付けます。


 ──テンプレを踏まえた上で個性を出す。なるほど、そういうことかと、脚本指南書を一冊だけ読んで感動した小説家が考えたとします。


「じゃあ俺の主人公はいつまで経っても転移したことに気づかないことにしよう」

「じゃあ私の主人公は可愛い女の子の奴隷をいたずらに解放しないで、逆に奴隷商と仲良くなってみよう」

「じゃあ僕の主人公は世界に一人しかいない時空間魔法の使い手で、なのに普段は一般的な火魔法しか使わないことにしよう。なんなら一生使わなくてもいいや。うん、斬新でいい」


 はい。

 アホです。


 さんざん見慣れない景色、知らない言葉に触れておいて異世界転移したことに気づかないとか、どんだけアホなんだよ。


 あーはいはい、テンプレだと奴隷を解放してヒロインにする流れだよね。うんうん、つまんないよね。でも、理由もなく奴隷商と仲良くする主人公はもっとつまらない。普通におもんない。奴隷商と仲良くなって起きるドラマとはいったい。


 いやいや、そんなに便利な魔法があるならなぜ使わない。四肢満足なのに白米を足で食べる人間が、さてどの世界に存在しますか。


 結論。


「テンプレを学べ」を曲解した作者さんが多すぎます。しかもその程度は曲解の域を超えて、もはや歪曲わいきょくしているだろと思うレベルです。


 大きな声で言います。よく聞いてください。


 すぅー、(息を大量に吸い込むさま)


 ! ! 


 なので、そもそもですよ、テンプレを学んだ上でそれを個性的なものに直す行為は、ただでさえ無難に面白いキャラクターやストーリーをさらに面白いものにする行為で、つまり、結構難しいはずなんです。


『スターウォーズ』をさらに面白くするには、あなただったらどこをどう変えますか?


『ワンピース』は? 『聲の形』は? 『この素晴らしい世界に祝福を』は? 『サマータイムレンダ』は? 『進撃の巨人』は?


『メイドインアビス』のあの世界観は、いったいどこをどう変えたらより良くなるのでしょうか。


 そうですよね。一日考えたくらいじゃ思いつきませんよね。

 特に最後の『メイドインアビス』に関しては、個人的に、筆者の人生をかけて考えても答えを見つけられる気がしません。

 つまり、そういうことです。「テンプレを学べ」の極意はここにあります。少なくとも筆者はそう思っています。


 テンプレを学ぶことで個性のあるキャラクターを作ることができる。それはいいのですが、なろう作家の中にはテンプレだけに注視しすぎて、当のキャラクターが本当に面白いものかどうかの判断が抜けている人が多いのです。


 いや、抜けているのではないですね。厳密には、長い時間をかけて自分で思いついたキャラクターに思い入れがありすぎて、彼もしくは彼女が、といった調子でしょうか。まさにコンコルドミステイクです。


 気持ちは分からないでもないし、むしろ筆者自身そのような経験は何度もあるので、自分のことのように想像ができます。

 でも結局、面白くないキャラクターで書き始めて困るのは、読者よりも、「え、なんだこのつまらん物語……」ってなる作家本人なんですよね──うわまじかよ、書き直しかよ。起承転結の転まで書いてこう自覚することの残酷さを、あなたはちゃんと理解していますか?


 自分で自分の創作を批評しろというのはなかなかに技術的な難易度が高いですが、こればかりはなんとかやるしかありません。他人に評価してもらっても大抵は、「うん、よくできてるよ。面白い」と忖度そんたくされて終わりですからね。


 だから、キャラクターの個性で困っている人は今一度、テンプレに立ち返って、テンプレがなぜ面白いのかをじっくり考えてみましょう。

 それが分かれば、テンプレの面白い要素だけ残して、その他の要らない肉の部分を自分なりの「個性」に変えることができるようになります。面白い要素さえ残っていれば、その個性もちゃんと面白いままです。


「テンプレを学べ」の真の意味とは、テンプレから外れたキャラクターを作ると面白い物語ができるから、ではなく、テンプレの面白い要素を勉強すると自分のキャラクターの個性も面白くなるから、という意味だったのです──なるほど! そりゃあすごい!


 テンプレの意義が分かったところで今回は終わりです。

 次回は、物語のジャンルによって読者が求めている個性は違う、ということについて語っていきます。文量は今回よりもさらに少なくなる予定ですので、安心してついてきてほしいです。


 ※未来の筆者より、過去の筆者へ追記。

 今回よりも文量が少なくなるだと?

 いいや? 書いてみたら全然そんなことなかったが? ふざけんな。

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