熱い夏。二人で部屋でぐでっとするだけの休日。エアコンの壊れた部屋。結露して水滴がたれるコップ。暑いのにくっつく二人。

「あついぃ。エアコン～！扇風機～！」

「壊れてるんだからしょうがないでしょ。暑いなら離れて」

「え～。やだ～。」

　八月の猛暑日の午後十三時。太陽の光が真上から降り注ぎ、その熱が地を反射してさらに熱くなる時間帯のエアコンも扇風機もない部屋。

　わかっていることは一つだけ、そう。このままじゃ絶対に熱中症になる。

「なんでエアコンつかないのさ」

「壊れた」

「治して」

「無茶言うな。」

「熱い」

「だから離れればいいでしょ？」

　この会話今日のうちにもう三回くらいしている気がする。熱いなら離れればいいのになぜか赤城さんは離れていかない。私だって熱い。でも赤城さんが動かないから私も動けない。だって、赤城さんは猫が乗っかるみたいに私に全体重をかけて座ってるから。

「そうだ！アイス！アイス食べようよ」

「……ないよ。」

「え。」

「うちにそんな上等な品ないよ。」

「どの時代だよ。も～、買ってきて～？」

「じゃあ、赤城さんも離れなきゃね」

「わかった。手を繋いでいこう。」

　……なんで、そうなる。熱いから離れてくれ。でも熱いし、疲れるだけだから文句は言わない。

「早く支度して。」

「やった…っ！」

　赤城さんは、ブラジャーにパンツ姿だったところに私のシャツと夏用のデニムパンツを履いて手にスマホを持ってすぐに支度を済ませた。

「いこう！れっつごーコンビニ！」

「コンビニ天国すぎる……ずっと住みたい。」

「置いて帰るか」

「まって、なんでそういうこと言う」

「熱いのにくっつくから」

「わかった。離れるから置いて行かないで」

「……」

「え、まって。冗談だよね」

「さあ」

「ウソって言って！黒崎の冗談めっちゃ怖いから」

　私が選んだのはソーダ味のアイスで赤城さんが買ったのはバニラのカップアイス。

　私は抹茶だとかチョコだとかバニラだとかのクリーム系のアイスが苦手だからいつもさっぱりしてる氷アイスにする。後味が口に残らないのもポイント。

　アイスを買うついでに、大量の氷とお茶と貼って冷やすやつを買っておいた。熱中症になって病院に行くよりかはいいと思う。

「んまー！」

　赤城さんは満面の笑みを浮かべ、スプーンでアイスをすくい口の中に運んでいく。さっきまでだるそうにしていたのが嘘のように今はすごく笑顔だ。私も買ったアイスを口の中に入れてその冷たさを堪能する。

「……っつ！」

「あはは！一気に食べるから！」

　強い刺激が、頭をきーんっ！と襲う。冷たいものを大量に摂取したせいで脳がそれを刺激物だと勘違いしてしまったようだ。

　私は頭の痛みが引いたころに再びアイスを口につけようと近づけると、アイスが溶けたのかタラ―とたれて腕を沿って流れた。

「あっ……」

「もー、溶けてるじゃん！」

　赤城さんはそう言いながら私の腕を取り、ハンカチかティッシュで拭きとるのかと思ったらおもむろに舌を出して腕にたれたアイスのしずくを舐めた。

「…っ。何してんの」

「舐めてる」

「何を」

「腕？黒崎の腕かな？」

「せめてアイスって言えよ。ここ外だけど。」

「家の中ならいいの？」

「……最低限理性は保ってよ。TPOってもんがあるでしょ。てかいつまで舐めてるの」

「じゃあTPOに配慮すれば舐めていい？」

「痴女」

「黒崎もそんな変わらんでしょ！」

「淫乱女。スケベ。」

「好きなくせに……。――――私に惚れたくせに！」

　赤城さんは私が持っていたコンビニの袋を無理やり奪い取ると、恨み節を叫びながら、べぇーっとに舌を出して家の方向へと走り去っていった。

　恥ずかしがり屋なくせに強がりなのは大層可愛らしいな、と思う。

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アイスを食べてたら溶けて腕にたれたのでそれを見てひらめきました。ｗｗ

黒崎のアイスの好みは作者の好みがそのまま反映されてます。バニラも抹茶も好きですが、味が口の中に残るのが苦手です。