男女比の偏ってる世界で義妹にVtuberデビューさせられたんだけど
灰かぶりスシ
第1話 転生?憑依?
ふと目が覚めた。
知らない天井、知らないベッド。なにこれ?
バイトが終わって安い布団にダイブした記憶だけは残っている。
取り敢えず起き上がるとしよう。この歳になって誘拐とかだったらシャレにならん。
...起き上がるのってこんなに力が必要だったっけ?って扉大きくない?
ん?指が動かしにくい...っていうかベッド高いというか大きくない?
部屋にあるものが全体的に大きい気がする...
そんなことを考えていたら扉が開いた。
ふとそちらに目をやるとそこには背の高い美人の女の人がいた。
明らかにパジャマ姿である。
「あら、おきたの?けー君」
どちら様、と声を出そうとするが声が出ない。口から空気が出るような感覚があるだけだった。一体どうなっている?それでも何とか声を出すしかない。
「ここ...どこ...」
「え!?」
女性は何に驚いたのか目を見開いて大きな声を上げた。
「けー君がしゃべった!」
??何を言っているのだこの人は。っていうかけー君って誰だよ。
まあ十中八九俺のことだろう。今ここには俺とこの人しかいないし。っていうかこの人でっかいな。背が高いにも程がある...ってそんなことを考えていたら女性は俺を抱き上げてきた。
「おはよう、ママですよ~」
ふと部屋にある化粧台を見る。そこの鏡に写っているのはちっさい子供と女性だった。ん?俺なんか子供になってね?それもパッと見た感じ3、4歳くらいに。おかしいな...俺は21歳大学生だったのに...っていうか顔良...!将来有望じゃん。いや、そんのことよりも今はこの状況を整理しなければ。見知らぬ場所、この体、ママと言う女性。
...これ転生した?いや、これでも理系の大学生。そんな非科学的な...いやでもこんな状況だしな...
そんな風に思考していたらリビングにつき、椅子に座らせられていた。っていうかママ?さん甘やかしすぎじゃないですかね。このくらいなら一緒に歩こうとするもんじゃない?だってギリギリ幼稚園児くらいだよ?正確な年齢はわからないけど。
「朝ご飯は玉子焼きでいい?」
声を出そうとする。出ない。代わりにこくりと頷く。
女性はにっこりとしてキッチンのほうに行った。どうしてこんなにも声が出ないのだろう。まるで長い間使ってなかった、かのような感覚に陥る。ひとまず周りを確認するために椅子から降りて周りを見てみることにした。椅子に足をかけるところがあって助かった。まずは本棚に近づく。見たことのある小説から見たことのないものもある。目当ては、上の方にある写真。この体になって気づいたことがある。明らかに目が良くなっている。少し後ろに下がり、写真を見る。自分を抱っこした女性が写っている。この現象が憑依といわれるものなのか、転生といえるものなのか。ただ、転生ならこの体の記憶もあるものなのでは?少なくとも俺の読んだことのあるラノベの転生ものはそうだった。...じゃあ俺の元の体は?
「ご飯できたよ~」
声が聞こえた。...これ以上考えるのはよそう。あまり考えるのは精神衛生上よろしくない。
「いまいく」
今度は言葉が出た。少々慣れてきた感覚がある。
「今日久しぶりにたくさんしゃべってくれるね」
?どういうことか分からず、首を傾げる。
「だって赤ちゃんの時以来しゃべってくれなくなっちゃっただもの。けー君の声が久しぶりに聞けて、ママ嬉しい!」
「これからはたくさんしゃべる」
本当に使ってなかったんだ...
それから朝ご飯を食べ終わった後のこと...ママはスーツに着替えてた。そしてチャイムがなった。玄関で何かを話している。そしてママともう一人見知らぬ人が来た。
「ママはお仕事行ってくるね、いつも通りにお手伝いさんがお世話してくれるからね。じゃあ行ってくるね。」
「いってらっしゃい」
そしてママは仕事に行った。お手伝いさん、おそらく家政婦さんが家のことをしてくれるのだろう。その家政婦さんは驚いた表情でこちらを見ていた。少なくとも、状況を正確に把握できていない以上、子供らしく振舞うのがいいだろう。
「私、坊ちゃまのお声、初めて聞きました。」
...忘れていたが、ママの話曰くしゃべらないんだったな、俺。いや無理だろ。俺おしゃべりマンなのに。
「これからはたくさんしゃべる」
「...そうですか」
そういった後に少し笑った。うわぁ。美人。クール系だぁ...
ただまあ、まずは目下の状況をつかむことを意識して生活してみよう。いつまで子供のフリが続くかなぁ...
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