星をひとつあげるね

sui

星をひとつあげるね

夜のはじまりを告げる鐘が鳴るころ、

丘の上に、小さな灯り売りの少年がいました。

彼は毎晩、空からこぼれた星のかけらを拾い集めては、

小瓶に詰めて売っていたのです。


ある晩、ひとりの旅人が丘を登ってきました。

その目には疲れた影があり、

手には、壊れかけたランタンを抱えていました。


「星を、ひとつください」

旅人がそう言うと、少年は微笑んで瓶をひとつ差し出しました。

中の光は、ゆらゆらと息をしているように輝いています。


「この星は、悲しいときに笑ってくれるんだ」

「笑う?」旅人は不思議そうに首をかしげます。

「うん。君がもう少し歩けるようにって、

 そっと背中を押してくれるんだよ」


旅人は光の瓶を胸に抱え、静かにお礼を言いました。

帰り道、風が冷たく頬を撫でましたが、

胸の中はなぜかあたたかく、

歩くたびに瓶の光が、かすかに「だいじょうぶ」と瞬きました。


その夜、旅人の夢の中で、

壊れたランタンの中に星がひとつ宿り、

新しい光となって夜を照らしていました。


そして朝。

丘の上で少年は空を見上げ、小さくつぶやきます。

「またひとり、光を思い出したね」


――星をひとつあげるね。

それは、誰かの明日をそっと照らすための贈りもの。

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星をひとつあげるね sui @uni003

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