立派
しろたけいすけ
第1話完結
…僕は立派だ。
相手が誰であろうと態度を変えず声をかけるし、頼みごとは断らない。だけどなんでもやってあげるわけではない。勉強なら教えてあげるし、時には断って背中だけを押す。アドバイスだけ与えるときもある。
僕はみんなの成長を促す、立派な学級委員長なのだ。
僕はいつも通り周囲を見回し、何かできることはないかと探した。どうやら今日も困っている人がたくさんいるらしい。やれやれ、仕事に取り掛かろうと僕は席を立った。
僕は席を立つと、教卓の近くでお喋りをしている女子たちに近付いていった。
「おはよう」
「それでさぁ」「え、それやばくない?」
「……今、なんか聞こえた?」「え、ううん」「んー、気の所為じゃない?」
次に、僕はひとりで読書している男子生徒のそばへ歩いていった。ちらりと背表紙を確認して声をかける。
「やあ、その小説最近話題になってるよね。やっぱり面白い?」
「……」
それから、僕は窓辺でふざけあっている男子たちへ話しかけに行った。
「それでタカ先がさぁ……うわ、寒ッ!」
「なんだよ、急に」「なんか悪寒がして…なんだ?」「いきなり振り返んなよ、ビビるだろ」
「風邪かもしれないな、早く保健室に行った方がいいよ」
…授業中の屋上は、風が吹き込むばかりで寂しいものだ。僕らの他には誰もいない寂しい屋上で彼は柵の外に立っていた。
「…よし、よし…今日こそ、飛ぶんだ。飛ぶぞ……」
「君の判断は間違ってないよ。さあ、今だ」
僕は震える背中を押してあげた。
「え」
僕は立派な学級委員長だ。
立派 しろたけいすけ @shirota1k
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