第6話パーマかけましたよ
朝おきて、三人で芽衣ちゃんが作ってくれた朝ご飯を食べる。
今日は芽衣ちゃんが産婦人科に行くらしい。定期健診。
「ひとりで行けるから大丈夫ー」
とのことなので、タクシー代を渡し、麦くんと俺は横浜ダンジョンに向かう。
昨日買ったボディバッグを二人で背負い、麦くんは手に小銭靴下を持つ。俺はジャージ、麦くんは上下スウェット、ダンジョンの中で異質な二人だ。
午前中からずっとスキルポン引きからの殲滅コンボでゴブリンを殺しまくる。昼には一端ダンジョンを出て、昼食を食べにバーキンに入る。
「ワッパー、セット、コーラ、オールヘビーで」
「ぼくもわっかのへびさんでー」
麦くんと対面で席に座り、ハンバーガーをもしゃもしゃ食べていると、さすが麦くん、口元が緩くぼとぼとトレーに野菜とソースが落ちていく。
「おいしいねスカくん」
「おいしいね」
口の周りをベタベタにソースで汚しながら、フニャンと笑った。
「どう、つらくない?」
コーラをズビーとストローで吸い込む麦くんにきくと、
「スカくんがいるから大丈夫ー」
と、言う。
「髪きりたい」
と、麦くんが言うので二人で美容院に行き、麦くんは明るいキャラメルマキアートみたいな色になり、かわいいどんぐりみたいになって、俺はセンターパートでパーマかけてみました。人生初パーマでドキドキしちゃう。
昼休みを取り過ぎたので急いでダンジョンに戻り、麦くんのスキルポン引きでエロ顔ゴブリンを集めて、一ウェーブ目をこなし終えた時、麦くんと俺同時にスキルアップの知らせが来たので、ダンジョンを出て受けつけのインターフェイスに向かう。
『プロレスラー・スキル・王道(プ)
→キック→十六文キック
→チョップ→脳天唐竹割り』
チョップスキルが成長しているので、取得。
『ジゴロ・スキル・美人局→ポン引き→ぼったくり』
麦くん…………………。
麦くん、このまま成長すると、どこに行ってしまうのか。
ダンジョン内に戻り、麦くんに、スキル発動できそうかきくと、何やら常時発動スキルらしい。
よく分からないので、いつも通りスキルポン引きでゴブリンを大量に集めてもらう。俺の新スキル脳天唐竹割りは読んで字のごとく、ゴブリンの脳天にチョップを当てると、そのまま真っ二つにゴブリンを縦に切り裂いた。
強すぎだろ脳天唐竹割り。見たこともきいたこともないプロレスラーと言う職業に、戦慄が走る。
十数匹のゴブリンを殺し切り、魔石を拾っていると、おかしなことがおきていることに気がつく。
魔石が多い。
確実に1・5倍はある。
俺と麦くんはボディバッグが破れて魔石がこぼれたりしていないか確かめ、変化がないことを確認し、もう一度スキルポン引きでゴブリンを集め、殲滅し、魔石を数えるとやはり1・5倍は多い。
きっとこれが麦くんのパッシブスキルぼったくりの効果なのだろう。
お得すぎだろ麦くん。
夕方近くまでゴブリンを殺しまくって、受付に戻り機械で換金すると魔石の数が四百二十三個、二十一万千五百円也。山分けで一人十万五千七百五十円。大台に乗った。
麦くんと俺はケーキを買い、雑居ビルに戻る。
芽衣ちゃんが麦くんを見て、
「かわいー、どんぐりさんみたいー」
と、大喜び。
俺を見て、
「もじゃもじゃー」
と、芽衣ちゃんからの人生初パーマの感想は一言で、それ以来何も触れられなかった。
俺と麦くんと芽衣ちゃん、三人でケーキを切り、大台突破のお祝いをした。
「毎日お祝いで楽しーね」
と、芽衣ちゃんがニヘラと笑い、麦くんもニヘラと笑った。
俺もニヘラと笑い、三人でケーキを食べ、芽衣ちゃんが作った麻婆春雨を食べ、とても幸せな気分になった。
麦くんはこのまま稼げそうだから、芽衣ちゃんが行きたがっていたマタニティースイミングに行ってと帰り際に買った水着をプレゼントして、俺も水中眼鏡をプレゼントした。
三人で川の字に布団を並べ電気を消すと、芽衣ちゃんが、
「スカくん、ありがとね」
と、言った。
麦くんは寝ていた。
「麦くんが頑張ったからだよ」
と、俺は言った。
「うん、」
芽衣ちゃんは、そう言った後、
「それでも、ありがとだよ」
と、もう一度言った。
真っ暗な部屋の中、それでも芽衣ちゃんがにっこり笑って俺を見ていることが分かった。
パパ、もしかしてだけど、女性、けっこう良いかも。
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