岐阜県二大超常現象事件

壊れたガラスペン

岐阜県本巣市の秋

第1話 StCST:燻主任調査員の記録

ふすべ主任。JATOAジャトアによって連動した異常現象が確認されました」


 秋の枯葉が舞い落ち始める、ここは岐阜県。私の出身県でもある。同県本巣市を観測対象として我々は派遣されている。

 時空間因果律研究開発機構、通称StCSTスティクスト、そして日本逢禍時観測調整機構、通称JATOAジャトアを含む特殊法人の総合地方事務所は、以前より観測されていた超常現象の調査のために設置された。だが、実際に稼働することになるとは……思いたくなかった。


JATOAジャトアは複数の現場にて展開しており、現場より映像が送られてきております」


 そう言って部下は、画面の電源を入れた。そこには、季節外れの桜の狂い咲きが確認された。しかし、白色というよりも赤っぽい色をしている。画面の異常だろうか、発光しているようにも見える。


「彼らとは常に情報共有を実行しています。これは時間異常であると思われます」


 やはり、時間的な異常なのか。


「これは淡墨桜うすずみざくらだろう? 天然記念物の監視・調査はしっかりと行ってきたはずだ。なのに、なぜ今、異常が観測されるのだ」


 淡墨桜うすずみざくらは樹齢1,500年以上あるエドヒガンであり、日本三大桜のひとつ。そして、国の天然記念物に指定されている。

 歴史的遺物は常に監視・調査の対象であるはずなのだ。StCSTスティクストJATOAジャトアも年に数度は調査していたはずなのだ。なのに、なぜ今。


ふすべ主任、我々も現場に移動しましょう。現地で観測すれば新たな発見があるかもしれないです」


 確かに、現地で観測すれば新たな発見があるかもしれない。だが、情報集約地点であるここを離れるのは、嫌な予感がする。


「観測班を組織し現場に派遣を。私はここで指揮をとります」


 これが、最善のはずだ。自身にそう言い聞かせ落ち着かせる。

 桜の狂い咲き以外にも何かある、そんな予感がするのだ。


「念の為、岐阜県総合庁舎に連絡を。超事調整委員会や経済省、環境整備省、文化芸術省など、関連省庁へ通達を出します」


 一応、現在考えられる関連省庁へ通達を出す。これは保険でもあり、重要な通達でもある。特に、超事調整委員会は上位組織に当たるため、本当に重要だ。彼らへの通達次第では、動ける範囲が大きく変わるのだ。

 そして、この地には歴史・文化が根付く……というか根付いていない地などはないだろう。文化芸術省はそのための重要省でもあるのだ。また、環境整備省は、この地の神秘領域の管理なども行っているはずだ。そして、経済省はその名の通りの経済だけでなく、国土管理も担っている巨大官庁だ。

 いざというときは彼らも動く。そのための通達だ。


ふすべ主任。JATOAジャトアより新情報が入りました」


 そう言って駆け込んでくる部下の一人。やはり私の嫌な予感は的中してしまったのだろうか。この案件は、まだまだ収束には程遠い。

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