囚執愛 ― 愛してる、だから奪った ―
婀娜
プロローグ 静かな春の眼差し
春の光が、校門の並木を照らしていた。
若葉の影が、石畳の上で静かに揺れる。
人の波が押し寄せ、笑い声が絶え間なく響く。
どの声も明るく、弾んでいて、耳をすり抜けていった。
人は群れると、同じ顔になる。
浮き立つ声も、笑みも、判で押したように見えた。
その中で、一人だけが目に残った。
ベンチに腰を下ろし、本を閉じた瞬間の笑顔。
誰に見せるでもない、小さな微笑み。
その自然さが、胸の奥に残った。
春風が通り抜け、黒髪を揺らす。
光を受けた横顔が、ほんの一瞬、眩しかった。
その眩しさに、橘凛は思わず足を止めた。
言葉にはできない。
理屈では説明できなかった。
ただ、その感覚だけが、静かに心にとどまっていた。
──これを恋というのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます