夜明けの少年~酒場の一騒ぎ~

迷えるウリボー

1.夜明けの始まり

 夜明け前の草原丘に一人の小年が立っていた。

 短めの黒髪に黒い瞳。どこか達観したような表情を見せ、大人顔負けの長身が小年に年長者の風格を漂わせているが、この少年がまだ十五歳の一般的にはまだ頼りない年であることをどれくらいの人たちが信じるだろうか。

 少年は足首までかかった黒いコートを身に纏い、ただ静かに遥か向こうの街を眺めていた。


「……さてと、そろそろ行くか」


 地面に転がっているおそらく旅の荷物であろう肩掛けカバンと少年の背丈ほどもある大剣を背負い、コートに付いているフードを深めにかぶり、少年は油断なく歩きだした。


 夜があける。日の光は世界を幻想的に輝かし、新たな一日の始まりを祝っているようだった。


「あの街にはどんなことがあるか……今から楽しみだな」


 光を真っ向から否定するような黒ずくめの少年も、これから来る近い未来を考え、年相応の微笑を浮かべていた。

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