取り置き人生
林凍
第1話
最初に「お取り置き」を頼んだのは、駅前のコンビニの唐揚げ弁当だった。十一時半、昼休み直前で売り切れが多い時間帯。レジ横の紙に名前を書いておくと、店員が「はい、佐伯さま。三十分だけお取り置きできます」と、魔法の札を弁当に差し込んだ。列の後ろの人が、少しだけ羨ましそうな顔をした。
それから、取り置きは増えた。人気のパン屋の限定クリームパン。電車の座席(優先席の前に、
「行列のない社会へ――合言葉は“お取り置きお願いします”」
アプリが出たのは、そのすぐあとだった。名前は〈とりおきくん〉。地図の上にピンが立ち、店も病院も役所も、すべて同じ画面の中で予約できる。譲るボタンもある。「必要な人にお譲りします」を押すと、ポイントが貯まった。ポイントが貯まると、アプリの画面に小さな花が咲いた。花の数で人柄が見える、と誰かが言った。
佐伯は、譲るのが得意だった。得意という言い方はおかしいかもしれないが、彼自身しっくり来ていた。駅のホームでベビーカーの母親が立っていれば、座席の札を譲った。総合病院で高齢の男性が肩を落としていれば、診察枠を譲った。役所の窓口で焦っている受験生がいれば、番号札を譲った。譲ると、相手の顔がふわりとゆるむ。その瞬間、佐伯の胸にも、同じ丸い温度が宿る。アプリの花は、簡単に咲いた。
妻ははじめ、そんな佐伯を誇らしそうに見ていた。夕食の支度をしながら、「今日も誰かに譲ったの?」と聞いた。佐伯がうなずくと、妻は「えらいね」と微笑んだ。息子は保育園の連絡帳に人の絵を描いて、「パパ、おはな、いっぱい」と書いた。
ある日曜日、動物園のパンダの整理券を取りに行った。アプリの抽選は運よく当たり、午前十一時に入場の枠。だが入口で、ベビーカーを押した父親に声をかけられた。「すみません、うち、さっき泣いてね……時間をずらしたくて……」佐伯は迷い、譲った。妻は笑って頷いた。息子は手を振ってパンダにバイバイと言った。午後の枠は、もうなかった。代わりに帰り道のパン屋でクリームパンを取り置いた。息子は、それでも満足そうに頬張った。
譲ることには快感があった。だからだろう、町のあちこちに「譲る」ための仕組みが生まれた。電車の座席の上に、小さなレールがついて、お取り置き札がカタカタと左右に動く。病院の受付では、番号札に「譲渡」ボタンがつき、押すと柔らかい音がした。役所には「お取り置き優良市民賞」の表彰式があり、会長が刺繍ベストを着て笑っていた。
佐伯は、表彰式の壇上に立ったことがある。花は五十輪で、会長は「地域の宝」と言った。拍手の音は吸音パネルに吸われて上品で、紙のトロフィーは軽かった。写真を撮って、アプリが特別なバッジをくれた。バッジの名前は「ゆずり名人」。名人の条件は、年間百回以上の譲渡。佐伯は、もう百二十回だった。
もちろん、譲るにも限度がある。妻の誕生日のディナーの席を、妊婦に譲った夜は、帰り道が少し寒かった。妻は「大丈夫」と言ったが、その言い方はいつもより薄く、箸置きに残った口紅の色がやけに濃く見えた。息子の保育園の発表会の最前列を、祖父母連れの人に譲った昼は、息子の声が半音ほど遠く聞こえた。父の手術日の面会枠を他の家族に譲った夕方は、エレベーターの鏡に映った自分の目が少し曇っていた。だから、次は譲らない、とその都度思った。だが次に誰かが困っていると、指は自然に「譲渡」を押した。
春の雨の夜、見慣れない通知が来た。アプリの画面に、花のマークと違う色の小さなベルが震えている。開くと、白い文字が並んでいた。
《お客様の人生本体のお取り置きは、本日で受取期限を迎えます》
人生本体――そう書いてある。佐伯は眉を寄せ、詳細を開いた。
《お取り置き番号:L-001-SAEKI》
《保管場所:とりおきセンター 本館B1F》
《受取期限:本日二十三時まで》
《ご案内:期限を過ぎますと、お取り置きは自動的に処分されます(供養パックへの切替可)》
妻は洗い物をしていて、息子はテーブルの下で積み木を組んでいる。「どうしたの?」と妻が聞いた。佐伯は「なんか、変なのが来て」と笑った。笑いながら、笑えないと思った。
とりおきセンターは、駅ビルの地下にできたばかりの施設で、今までにも靴や家具を受け取ったことがあった。入口に行くと、自動ドアの上に「本日も“受け取り”ありがとうございます」というLEDが流れている。受付には制服を着た係員がいて、笑顔の角度が二十二度で固定されている。番号札を取ると、機械がいつもの柔らかい音を立てた。ほどなく番号が呼ばれ、カウンターに近づく。
「お取り置き番号をお願いします」
「L-001……SAEKI」
係員は端末を打ち、「少々お待ちください」と言った。奥に向かってインカムで何かを告げる。しばらくして、台車が現れた。台車には、透明な箱がいくつも積まれている。冷蔵庫のような涼しい空気が一緒にやってきて、箱の内側には白い霧が薄く貼りついている。
「お待たせいたしました。佐伯さまのお取り置き、本体、一式です」
係員は一つずつ、読み上げを始めた。
「若かった頃の夢 ×1」
透明な箱の中に、古びたギターと、ラケットと、大学祭のポスターが重なって見えた。奥のほうで、外国の路地の匂いが微かにする。
「結婚記念日の夜景 ×1」
箱の中に、光の粒が溜まっている。見覚えのある街のビルの輪郭が、うっすらと浮かぶ。手の跡がガラスの内側から曇りを描いている。
「子の初めての声 ×1」
小さな波形が眠っていた。再生ボタンはない。ただ、そこにある。
「怒る権利 ×1」
硬そうな赤い粒が、薄い袋に入っている。袋の口には封じ目がついて、開けるには少し力が要るように見える。
「断る権利 ×1」
透明な板。手で押すと、たぶん軽い音がするだろう。
「最後の一口 ×1」
小さな皿に、一口だけ残ったケーキの角。フォークの影が落ちている。
「未使用の休暇 ×10」
薄い青い封筒。宛名は自分だが、差出人は空白だ。
係員は、最後の箱を持ち上げた。ほかの箱より少し大きい。ラベルには、太い字で書かれている。
「人生本体 ×1」
佐伯は息を飲んだ。透明な箱の中は、空虚だった。空虚なのに、重さがある。箱の外側に、小さな赤いシールが貼られていた。
「期限切れ」
係員は表情を変えずに、丁寧に説明した。
「保管の温度・湿度とも適正ですが、長期保管により、保証の対象外となっております。お受け取りいただくことは可能です。ただ、品質についてはお約束できません。なお、期限切れのお品物は“供養パック”への切替も承れます。ポイント加算の対象です」
供養パック。聞き慣れた言葉だった。とりおきセンターでは、取りに来ない品物をまとめて処分する。処分は「供養」と呼ばれ、やさしいBGMが流れる。処分を選ぶと、譲ったのと同じだけポイントが貯まる。画面に花が咲く。
佐伯は箱に指を伸ばした。冷たい感触。内側に貼りついた白い霧が、体温で薄く溶ける。指の跡が残る。係員が差し出したのは、小さなスタンプだった。文字が反転している。朱肉の赤は、弁当屋のからしに似た匂いがした。
「お受け取りの場合は、こちらに
スタンプの取っ手には、彼の名字が刻まれていた。佐伯は笑った。笑いながら、少し泣きたいと思った。泣く権利はどこにあるのだろう。
横で、別のカウンターから声がした。「供養でお願いします」。係員が「ありがとうございます。花が三輪咲きました」と言っている。プリンターから領収書が出る音は、あらゆる場所で同じだ。紙は軽く、角は冷たい。
「譲れば、花が咲く」。それは佐伯の身体に染みついた反射だった。花を咲かせるのは楽しい。アプリの通知の音は、家の中で一番やさしい音に設定してある。妻も、最初はそれを好きだと言った。「すごいね、今日も咲いたね」。息子は小さな指で画面の花を数えた。数え間違えても、誰も怒らなかった。
あとから、気づいた。花の数を数えるのに、誰も香りを嗅がないことに。
係員が控えめに咳払いをした。佐伯は、スタンプを持ち上げた。持ち上げたまま、台に落とさずに、妻と息子の顔を思い出そうとした。妻の眉間の小さなしわ。息子の爪の端に残る砂。父の病室の窓ガラスに映った夕焼け。母が「早く帰っておいで」と言った電話の声。友人の結婚式で、席を譲って廊下に立っていた自分の靴。譲るたび、誰かが楽になった。そのたび、花が咲いた。花は画面の中で笑って、台所の生ごみの匂いと混じり合って、やがて冷蔵庫の中で冷えた。
「供養にしますか?」と係員が訊いた。声は柔らかく、どこにも当たらない。
佐伯は、首を横に振った。「受け取ります」
「恐れ入ります。
スタンプの朱肉に軽く触れた。朱の色は濃く、紙の繊維は柔らかい。押す場所は小さな四角で、四隅が角ばっている。角ばった四隅は、四方の何かを押し返す。
佐伯は、押した。音はほとんどしなかった。印影はくっきりして、そこに自分の名が反転していた。「自分で受け取った」という記号が、紙の上に生まれた。
「ありがとうございました」。係員は変わらぬ声で言った。「温めのカウンターはあちらです。期限切れのお品物は、十分に温め直すことで、ある程度、風味が戻ります」
温めのカウンター。中学生の頃、コンビニで弁当を温めてもらったガラスケースとよく似ていた。行列はない。温め方のガイドが貼ってある。「若かった頃の夢:低温でじっくり。焦がすと苦くなります」「結婚記念日の夜景:光の粒が立つまで」「子の初めての声:温めすぎに注意。壊れやすい」……「怒る権利:冷たいままで」「断る権利:開封後、すぐお召し上がりください」「最後の一口:そのままどうぞ」「未使用の休暇:湯煎可」
佐伯は笑ってしまった。笑いながら、たくさんのことが胸の中で逆流した。温めのダイヤルを回す。ガラスの向こうで、光の粒が、少しずつ立ち上がる。波形が揺れ、ギターの弦が、遠い指の跡でわずかに鳴る。赤い粒は、冷たいまま、皿の上で確かな形を保つ。透明な板は、手にとると軽い音を出した。ケーキの角は、舌の上で砂糖の粒になった。湯煎の袋が、熱でやわらかくなる。
受け取りカウンターの横に、小さなテーブルがあった。紙コップの水と、薄い紙ナプキン。佐伯は、そこでいくつかを食べ、いくつかをポケットに入れた。夢は全部は食べきれなかったので、持ち帰ることにした。怒る権利は、袋の口を破るのに少し力が要った。破ったとたん、胸の奥に冷たい風が入った。断る権利は、口の中で軽く弾けた。最後の一口は、小さな皿の上でしばらく眺め、それからゆっくり舌に乗せた。甘さは少し飛んでいたが、悪くはなかった。
係員が、もう一枚の紙を差し出した。領収書だ。品目が並び、合計は「¥0」。右上に、黒い字で印刷されている。
「お受取内容:本日」
佐伯は、紙を折ってポケットに入れた。折り目は、やわらかかった。
帰り道、とりおきセンターの外で、見知らぬ若い男性が「供養でお願いします」と言っていた。彼の画面にも花が咲き、係員が「三輪です」と告げた。三輪は、小さな花束になる。花束は、写真に撮るのにちょうどいい。
駅前の横断歩道で、佐伯は立ち止まった。雨が降り出していた。傘を取り置いていない。シェア傘のスタンドには「ご自由にどうぞ(返却は明日)」と貼ってある。明日は返せるだろうか、と笑って、一本を抜き取った。ビニール傘の骨は軽く、雨粒が落ちて、透明に筋を描いた。
家に帰ると、妻がキッチンでエプロンを外していた。息子は床に座り、積み木を片づけている。佐伯は、ポケットから透明な板を取り出した。断る権利。妻がこちらを見た。佐伯はうなずき、言った。「今夜は、君の席を譲らない。二人で座ろう」
妻は目を瞬き、小さく笑った。「予約してないけど?」
「
食卓に座ると、パスタが少し伸びていた。伸びた麺は、悪くなかった。息子が「おとうさん、おはなは?」と聞いた。佐伯はスマートフォンの画面を机に伏せた。「今日は、咲かせないでおこう」
テレビのニュースは「善意ポイントの付与率見直し」を伝えていた。画面の端に数字が踊り、会見する誰かが「公平」と言った。公平は、きれいな言葉だ。きれいすぎると、少し薄い。
翌朝、会社に「午後から行きます」と電話した。総務の声は驚いたが、「わかりました」と言った。驚いた後の「わかりました」は、思ったより柔らかい。
昼前に、息子の保育園からメッセージが来た。「お昼寝の時間に、お父さん来られますか」。佐伯は「
園庭のベンチに座ると、曇った空の下で、砂場の砂が湿って光っていた。息子が眠そうな目で走ってきた。佐伯は、肩に手を置いた。肩は小さく、温かかった。「パパ、おべんとう?」と息子が聞いた。「今日は、ない。帰りに何か買おう。取り置かないで」
息子は「とりおきしない」と面白そうに復唱し、砂場に戻っていった。砂は、予約せずに指の間からこぼれた。
午後、病院に寄った。父の主治医の前で、面会の枠を「譲渡」した日を思い出す。面会室のドアの横に、小さな札が下がっている。「空いています」。空いているなら、入ってもいい。父はベッドの上で、窓の外の木を見ていた。窓の向こうで、風が葉を揺らしている。風は、予約しない。父は振り向いて、ゆっくり笑った。「来たか」。佐伯は椅子に座り、「来た」と言った。父はうなずき、「昨日、誰かが来た」と言った。誰かは、たぶん別の家族だろう。昨日の誰かに譲った枠のかわりに、今日の自分がいる。順番は、たまに、
夕方、役所の前を通ると、窓口の上のモニターに「本日の予約終了」の表示が流れていた。その隣に、段ボールで作られた小さな札が立てかけられている。「当日分 相談可」。ペンは紐で結ばれ、紙は薄く波打っていた。佐伯は、札を立て直した。風で倒れないように、角を少し押し込むと、段ボールは素直に従った。
夜、とりおきセンターからメッセージが来た。
《お受け取りありがとうございました。レビューにご協力ください。星をお選びください》
星は五つ。佐伯は、星を押さなかった。代わりに、返信欄に短く書いた。「温め直すと、おいしいことがある」
送信すると、「貴重なご意見ありがとうございます」と返ってきた。貴重という言葉は、少し重い。重い言葉は、冷蔵庫の奥で冷える。
ベランダに出ると、夜風が頬を撫でた。遠くで、救急車のサイレンが鳴った。サイレンは順番を飛ばして走る。走った分だけ、どこかが譲る。譲った先で、誰かが助かる。譲ることは、悪くない。譲り過ぎは、少し寒い。
ポケットから、透明な板をもう一度取り出した。断る権利は、軽い音を立てる。軽い音は、鼓動のようだ。佐伯は、板をテーブルに置いた。板の上に、今日という紙を重ねた。紙には、午前のベンチ、午後の病室、夕方の段ボール、夜の風――が、薄い鉛筆で書き込まれていく。鉛筆の芯は、柔らかく減る。
翌日、会社の同僚に久しぶりに昼食に誘われた。人気のラーメン屋。岸本が「席、取り置いといた」と胸を張る。佐伯は「ありがとう。でも、今日は並ぶ」と言った。岸本は目を丸くしたが、一緒に並んだ。列は、思ったほど長くなかった。前の人が「どうぞ」と譲ろうとしたので、「大丈夫です」と断った。断るのは難しくなかった。断ったあと、列の風が少し変わった。穏やかに、前へ進んだ。
丼が来たとき、湯気が眼鏡を曇らせた。曇りを指で拭い、麺をすすった。熱さで舌が痛かった。痛いのは、悪くなかった。岸本が笑った。「最近、お前、変わったな」
「うん。
「不便じゃない?」
「少し。でも、温かい」
「何が?」
「今日」
岸本は首を傾げ、それから頷いた。頷き方も、予約ではなかった。
数日後、自治会から通知が来た。「お取り置き優良市民賞」の見直し。ポイントは廃止され、花は咲かなくなった。代わりに「お困りの方、声をかけてください」の小さな紙が回覧板に挟まれていた。紙の端に「返却期限:なし」と印刷されている。なし、という文字は、やさしかった。
夜、妻が言った。「来月、両親と食事、
「もちろん」
「席、なかったら?」
「立てばいい」
「立つ食事?」
「悪くない」
妻は笑った。笑い方も、温め直したみたいに柔らかかった。息子はフォークを握り、「さいごのひとくちは、パパ」と言った。佐伯は「ありがとう」と言って、譲られた最後の一口を受け取った。甘さは少し飛んでいたが、悪くはなかった。
眠る前、とりおきセンターからの領収書を取り出して、もう一度読んだ。品目の並びは相変わらずで、端の「お受取内容:本日」の文字が黒々と残っている。紙の裏に、小さく書き足した。「返却不可」。自分で書いた文字は、少し震えていた。震えは、冷蔵庫のモーター音に似ていた。
電気を消す。暗い天井を見上げる。明日のことは、明日考える。明日を取り置かないと、眠りは少し深くなった。夢の中で、ガラスの箱の白い霧が薄れていく。薄れた霧の向こうに、光の粒が立っている。温め直された夜景は、画面の中よりも、少し温かかった。
翌朝、玄関を出ると、雨上がりの道路に小さな水たまりが残っていた。水たまりに傘の骨が映り、空は曇っていた。駅に向かう途中、ベビーカーの母親と目が合った。彼女は会釈した。佐伯は、笑って会釈した。座席は取り置いていない。立てば、立てる。立つ足は、まだ疲れていない。疲れたら、座ればいい。座れなければ、次で座ればいい。次がなければ、今日のまま立っていればいい。
改札の先で、構内アナウンスが流れた。「本日は混雑が予想されます。譲り合いにご協力ください」。協力、という言葉は、花の匂いが少しだけした。佐伯は笑って、列の最後尾に並んだ。列は、ゆっくりと進んだ。誰かが「どうぞ」と言い、誰かが「大丈夫です」と言った。譲り、断り、また譲り、断る。そのたびに、小さな音が生まれ、消えた。音は、温め直された弁当の蓋が開くときに似ていた。
昼、ふとアプリを開いた。〈とりおきくん〉の花の画面は、アップデートで少し変わっている。花はもう咲かない。代わりに、小さな文字がひとつ、画面の隅に浮かんでいた。
「お取り置きは、ほどほどに」
小さな文字は、いつも大切なことを言う。佐伯は画面を閉じ、ポケットに手を入れた。指先に、紙の感触。領収書の折り目が、今日の形をしていた。
午後の風は、予約せずに吹いた。頬に当たり、少し冷たく、悪くはなかった。
取り置き人生 林凍 @okitashizuka_
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