第17話 裏切りの影と凍てつく真実
1. 影の森へ──不穏な空気
クロスヴィルの朝は、まるで世界が息を潜めているかのように静かだった。
宿屋の屋根に張った薄氷が、朝日を受けてキラキラと輝く。
セレナが風の精霊を呼び寄せ、ウィンド・トレースを発動。
空に残る黒い影の残滓が、まるで毒の糸のように北へ伸びていく。
「影の森……偽ガルドの気配は、あそこよ」
セレナの緑の瞳が、鋭く光る。
一行は馬車を捨て、徒歩で森へ向かう。
リアは氷の杖を突き、歩くたびに小さな氷の結晶が足元に生まれ、滑り止めになる。
リア HP: 48/120 / 状態:回復中・魂補完(不安定)
時折、左腕に氷の結晶が浮き、すぐに消える。
彼女の息は白く、額に汗が浮かび、足取りは明らかに重い。
悠真は常に半歩後ろを歩き、彼女の背中を見守る。
「リア、歩幅が小さくなってる。俺の背負うか?」
「……恥ずかしいから、ダメ」
顔を赤らめながら、リアは小さく笑う。
内心、「君の背中、温かそう……」と胸が疼く。
だが、「私が弱ってるせいで、みんなに迷惑を……」という自責の念が、彼女の心を蝕む。
森に入ると、陽光が届かず、影が地面を這う。
木々の間から、人の形をした影がチラチラと見える。
空気は重く、魔力が淀んでいる。
「気をつけろ……影魔族の領域だ」
ガルドが戦斧を握りしめ、背筋に冷たいものを感じる。
「俺の偽物か……ぶっ潕してやる」
エレナが銀髪を束ね直し、幻魔法で周囲を警戒。
セレナが風の精霊を飛ばし、敵の気配を探る。
悠真は剣を抜き、リアの横に立つ。
「リア、俺の後ろにいろ」
「……うん。でも、私も戦える」
彼女の声は弱いが、瞳には決意が宿る。
2. 影の神殿──不気味な鏡
森の奥、黒い石でできた神殿が現れる。
壁には蠢く影が描かれ、入口の扉には巨大な鏡が埋め込まれている。
影の結界
入場条件:「本物の絆」を証明せよ
セレナが手を翳す。
「ソウル・リンクで……」
五人の魂が金色の糸で繋がる。
鏡が光り、扉が開く。
内部は真っ暗。
足元から影の手が伸び、リアの足首を掴む。
「リア!」
悠真が剣を振るうが、影は切れない。
突然、ガルドの声が響く。
「よう、英雄ども。本物のガルドは、もういないぜ」
暗闇から、ガルドそっくりの影が現れる。
だが、瞳が真紅で、斧が影でできている。
「偽ガルド」だ。
3. 偽ガルドの挑発と本物のガルドの登場
一行は一斉に警戒。
ガルドが斧を構え、偽ガルドを睨む。
「てめえ……俺の姿を汚すな」
偽ガルドが嘲笑。
「本物のガルドは、地下牢で泣いてるぜ。
お前らは、偽物の俺に騙される」
悠真は剣を握り、リアを背に守る。
「リア、後ろに下がれ」
「……うん」
リアは杖を握り、氷魔法を準備するが、体が重い。
セレナがウィンド・ブレードを放つ。
偽ガルドがシャドウ・ミラーで風をコピーし、返す。
エレナがイリュージョン・ミラーで分身を作る。
だが、偽ガルドは本物を見抜く。
その時、背後から別の気配。
本物のガルドが、鎖に繋がれた姿で現れる。
「くそっ……逃げろ、みんな!」
だが、本物のガルドの目が虚ろ。
影魔族の支配を受けている。
「ガルド!?」
悠真が振り返る瞬間、本物のガルドが斧を振り上げる。
標的は、万全じゃないリア。
「リア、危ない!」
悠真がウィンド・ステップでリアの前に割り込む。
ガルドの斧が、悠真の剣に激突。
ガシャン!
衝撃で悠真が吹き飛ばされる。
リアが悲鳴を上げる。
「悠真!」
4. 裏切りの真実──偽ガルドの消滅
その瞬間、偽ガルドの姿が揺らぎ、霧のように消滅。
「幻影……!?」
セレナが叫ぶ。
本物のガルドが冷笑。
「馬鹿め。
最初から、俺は魔族側だ」
ガルドの瞳が真紅に染まり、鎖が影の触手に変わる。
「影魔族の血が、俺の体を蝕んだ。
家族を殺されたのは本当だが、復讐の対象は英雄だ」
悠真が立ち上がり、剣を構える。
「ガルド……お前、何を……」
リアが震える声で呟く。
「ガルド……嘘、でしょ……」
5. 絶体絶命の危機
ガルドが戦斧を振り上げる。
「クラッシュ・アックス・ダーク!」
影の衝撃波がリアを直撃。
悠真が炎の剣で衝撃波を弾くが、体が麻痺。
セレナが風の結界を張るが、影に破られる。
エレナが幻魔法でガルドを惑わすが、支配は解けない。
リアは杖を掲げるが、魔力不足で氷の槍が小さくしか出ない。
「くっ……私のせいで……」
ガルドが再び斧を振り下ろす。
「終わりだ、英雄!」
6. 悠真の覚醒再発動と防衛
その瞬間、悠真の瞳が炎のように燃える。
ステータスウィンドウが警告。
警告:感情高揚 / 覚醒再発動
魂の欠片:2/7(欠落)
「インフェルノ・ソウル」発動。
折れた剣が魂の炎に包まれ、再生。
悠真がガルドの斧を弾き飛ばす。
「リアに触れるな!」
炎の剣がガルドの影の触手を焼き払う。
リアが立ち上がり、杖を地面に突き刺す。
「フロスト・ドメイン!」
氷の結界がガルドの動きを止める。
「悠真、今!」
悠真が剣を振り上げる。
「ソウル・インフェルノ・ブレイズ!」
炎と氷が交差し、光の爆発が生まれる。
7. ガルドの敗北と真実の告白
ガルドが悲鳴を上げ、影の核が砕ける。
「ぐっ……英雄の絆、予想以上だ……!」
影の支配が解け、ガルドが倒れる。
「……俺は……何を……」
正気に戻る。
悠真が剣を下ろす。
「ガルド……お前、本当は……」
ガルドが涙を流す。
「影魔族に家族を殺され、俺は復讐を誓った。
だが、魔族の呪いに心を蝕まれ、英雄を憎むようになった。
偽ガルドは、俺が作り出した幻影だった……」
8. 氷の女王セレスティア登場
神殿が突然凍結。
壁に氷の結晶が広がり、氷の玉座が現れる。
そこに座すのは、銀白の髪の女性──フロスト・セレスティア。
「英雄……欠片を渡す前に、試させてもらう」
彼女が手を翳すと、アブソリュート・ゼロ発動。
周囲が絶対零度に近づき、全員の動きが停止。
「エレナ……あなたの血は、儀式の鍵」
セレスティアの瞳がエレナの首筋を捉える。
悠真が叫ぶ。
「リアを守れ!」
だが、氷の結界に閉じ込められる。
9. リアとセレスティアの対話
氷鏡が現れ、セレスティアの姿が映る。
「リア……あなたは、凍ることを選んだの?」
リアは震えながら答える。
「いいえ。君と一緒に、溶けることを選んだ」
セレスティアの瞳が揺らぐ。
「その答え、血の神殿で証明しなさい」
氷鏡が砕け、全員が神殿外に転移。
10. 撤退と次章への布石
森の外、夜空の下。
リアの左腕の氷結晶が肩まで広がる。
「リア……!」
「……大丈夫。セレスティアの力が、私の魂を……」
悠真が決意する。
「血の神殿へ行く。
エレナの血で、セレスティアを救う」
ガルドが立ち上がり、斧を握る。
「俺の裏切りは、許されねえ。
だが、魔王を倒すまで、戦わせてくれ」
朝日が昇る中、五人の背中が影を伸ばす。
血の神殿──
セレスティアの封印と魔王の復活が交錯する、
決戦の舞台へ。
──第十七章 完
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