少女達は青春という舞台を架ける
園田庵
プロローグ
小さい頃、私は何かすごいことをしたいなんて思っていなかった。人並みの夢を持って、好きな人と結婚して。そんなものだろうと思っていた。
でも、彼女の舞台を見たことでそんな考えはひっくり返った。
『ああ、私はなんて幸せ者なのでしょう!』
煌びやかなドレスを翻してお姫様はもう一人の登場人物へと喜びの言葉を投げかける。
その先にいるのはお母様。二人は心から幸せそうに、愛おしそうに言葉を交わす。
『お前のその言葉を聞けて、私はどれだけ幸せだろう!』
二人は手を取り合い、見つめあって互いの愛を確かめ合う。
何よりも尊く美しい親子愛。その形に周囲の人間が、空気が、そして私たち観客までもが祝福する。エキストラだけじゃない。まだ舞台が終わっているわけでもないのに観客席からも拍手が広がる。観客までもが空気に引っ張られる。そんなことがごく稀にあるらしい。
その時、私と同じ小さな手が、舞台を越えてこちらに届いたのだ。
そして私に夢ができた。この子みたいに、私も誰かを喜ばせられるような、そんな何かを見つけたい。その一心で、私はなんでもやってみた。そして今、私の舞台はトラックにある。
「頑張れ、主人公!」
スタートラインに立つ私を、あの時の少女が応援してくれる。そんな声がした気がした。
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