神官と薬師の物語(仮)

もちもちだいふく

はじまり。

この世界が世界と呼ばれるずっと前

其処には燃え上がる氷塊と絡みつく炎しかなかったと言われています


やがて氷塊の解けた雫の中に、原初の巨人が生まれました。

原初の巨人は炎を食べ、氷塊を舐め大きく成長し、原初の巨人が喰らった炎と氷からから巨人が新たに生まれました


炎と氷が生まれ、また新たに生まれたものがありました

それは最初こそ小さな存在でした

混沌の中から生まれた存在

熱さと冷たさが生み出した《死》でした。


荒れた混沌は死にとっても煩わしいものでした、ただ其処に在る巨人たちは虚空で自由に暴れまわり熱と冷たさがぶつかり合うばかり


混沌を終わらせるために死の神が巨人に戦いを挑みました

好き勝手に暴れまわり続けた巨人たちは後から生まれた死を打ち倒そうと立ち上がりました。


炎の巨人は全てを灰に還す炎

氷の巨人は全てを凍てつかせる息

原初の巨人はその力で死を叩きのめそうとしました


死は嵐を巻き起こし、巨人たちを吹き飛ばし

氷がもたらした力で産み出された雷を手にし巨人に挑みました。

その身を焼かれて、裂かれようと挑み続けました


激しく戦う死の神の傷から雫が滴り落ちました

それは原初の巨人が生まれた燃え上がる氷の雫とは違う

炎よりも赤い雫でした

そうして滴り落ちた雫の中から新しい神が生まれたのです

炎より鮮烈な赤を宿した新しい神


混沌を鎮めるために二柱の神は戦いました


死から生まれた始まりの神が氷と炎の巨人の頭を拳で叩き割り、二体の巨人は脳髄を飛び散らせながら虚空の中に倒れました。

嵐の神が放つ雷の槍が原初の巨人を貫き、遂に原初の巨人の体は引き裂かれ他の巨人たちと同様に虚空に倒れました。

最後の巨人を死と嵐の神が討ち滅ぼしついに、原初の巨人は息絶えギンヌンガの淵に倒れました


原初の巨人が流した血液は海となり

巨人の肉塊から大地が、骨から山脈が。骨のかけらからは、岩や玉石や小石が生まれました

死した炎の巨人は太陽へ

死した氷の巨人は月へ変わりました


そうして

長い長い混沌が終わりを迎えたのです。

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