鈴音

 さーっと風が通り抜ける。周りの木々が歌うかのようにざわめく。鳥達も楽しそうにさえずっている。今日は爽やかな晴れの日。

 でも、雲が立ち込めてきた。

 そして、やがてそれは雨に変わった。傘は持ってきていなかった。慌てて木の下に座り込む。この雨は止むだろうか。雨は更に酷くなってくる。怖くて仕方なかった。

 その時、一羽の鳥が雨宿りしに来た。羽根は雨に濡れてボロボロでじっとこちらを向いている。目の前の鳥は怖がる私を励ますようにチチチと歌ってみせた。声は羽根のようにボロボロだったけど、嬉しかった。「ありがとう」と言ってみたけれど、分からないだろう。でも、目の前の鳥は分かっているかのように、またチチチと鳴いてみせた。その鳥は少し満足げだった。

 雨が上がると身体を震わせて水分を飛ばして飛び立っていった。さっきまでボロボロだった羽で。ボロボロの鳴き声を残して。

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鈴音 @suzune_arashi

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