岩の女神の苔むす愛ー鏡よりもあなたの瞳へー

撫菜花

第1話

「私は、そんなに醜いだろうか…。」


父神の命で、妹であるサクヤと共にある男神のもとに嫁いだものの、その男神の求めていたのは美しいサクヤだけ。姉の私は「醜い妻はいらぬ。」の一言だけで追い返されてしまった。


昔から、美しさの賞賛はすべて妹のサクヤに向けられていて、私は日陰の存在だった。

それでも、サクヤほどの美しさではないだけで、受け入れられぬほど醜いとは思いもしなかった。



「私はどんな姿をしているのだろうか…。」

いつの日か、父神のくれた鏡の存在を思い出し、初めて自分の顔を覗き込んでみた。


そこにいたのは、眉間は険しく、口は真一文字に結ばれた、岩のような仏頂面の女だった。


「こんな…こんな…サクヤとは似ても似つかないなんて…。」

突きつけられた現実が苦しくて、思わず鏡を投げ出し野に隠れた。


いつのまにかそこに、社が一つ建っていた。しかも、あの鏡を祀っている。


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