魅せるオレと見せるキミ

@614810ozmk

第1話

“202号室 黒滝瞳月”と記載されているネームプートを確認し、病室のドアを開けた。

開けてすぐベッドで静かに寝ているアイツに目がいった。死期が近いのにも関わらずモデル、俳優として活躍していたアイツの横顔は綺麗だった。そんな彼に私は声をかける。

「まだ寝てるん?せっかく来たのに」

黒滝瞳月はもう少しで死ぬ。そう理解しているのに冷たい態度をとってしまう。

私の言葉で目が覚めたのか黒滝は少しずつ重そうな瞼をあけ私の方を向く。その瞳はまるで私のことが嫌いだと訴えるかのようにこちらをただじっと見つめるだけだった。私は少しトーンを高くあげ明るく話しかけた。

「ほら、綺麗な花を持ってきたんよ?それとフルーツ、食べへん?」

そう言いながら黒滝の横の机に置こうとする。

「、、、、いらない。」

黒滝の低い声が2人しかいない病室に響き渡る。これ以上話しても会話が成り立たないと悟った。

「そっか、ごめん。私帰るわ。」

黒滝にそう告げ逃げるように病室から出ようとした。

「待って」

そう黒滝から声をかけられた。私は思わず足を止め黒滝の方を振り返る。

「少しオレの昔話を聞いてくれよ」

私は少し迷った。彼の話を聞くか、無視して帰るか。前者でも後者でも私にとっては良いことではないと感じているからだ。

私は無言で先ほどの机に花とフルーツを置いて黒滝のベッドの近くにあった椅子に座った。

黒滝は私が話を聞くと理解したのかゆっくりと話し始めた。

黒滝の昔話はある人との5年間の思い出だった。

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