第10話 (27)

「やめたらどうやって生活するんですか?」


 ようやく並んで歩ける。彼女はフードを深く被ってるけど。

 お仕事ゆっくりやめる作戦は進行中。現在引き継ぎ作業中。


「どうにでも。海外の豪邸でもいいし、都内のマンションでもいいし。郊外の避暑地とかも押さえておこうか?」


「え、なに、お金あるの?」


「あるよ。82億」


 82億。全地球の市民から1円ずつ徴収するシステム的なやつでしか聞いたことがない額。


「だから、お仕事やめて。あなたはわたしとずっと一緒。離れることは許しません」


「海外で何やってきたの?」


「秘密」


 彼女。手を伸ばす。


「大丈夫。人は直接殺してないよ」


 間接的にはどうなん。


「あなたと手を繋ぐときに、殺した手で繋ぐのはほら、良くないかなって」


 そうですか。


 手を繋いでみる。


 ファーストキス以来の、身体接触。なんかちょっと、どきどきする。


「その、フードって。やっぱり色々と狙われうっ」


 え。


 刺された?


 なに?


 腹。


 カッターナイフ?

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