勇者に憧れた魔王様!!

陽炎ザクロ

第1話「子供の憧れ」

――――3歳


「僕は将来勇者になるんだ!」

「ナハト様なら成れますとも」


――――7年後


「勇者に成りたい」

「またですか?魔王様、勇者に攻められる可能性があるのが、魔族なんです、英雄譚の勇者のお話は絵本の中の話しなんですから、いい加減魔王様は魔王様の自覚を持って下さい」


――――10年後


「僕は勇者になる、そう運命で決まってるんだ!」

「はいはい、寝言は寝ていってください。職務の時間です」


 ナハトは書類を書きながらどうやったら、勇者になれるかを考えている。

 魔族の国と言っても領土は広く様々な王が統治している、それを狙い勇者になるのもありではないだろうか?


 ナハトは深夜置き手紙を自室に残した。


『魔王辞めます。by勇者より』



――――


 僕は人間の国マルザバール国に着ていた、石造りの町並みに水の整備が行き届いているいい国で、水の都なんて言われている都市にいる。


「ここが、人間の国か……」


 とりあえず、金に困っているので、自分の私有資産を異次元空間に収納しているが、指輪を一つ取り出し、宝石店の看板があるところへ入った。


「いらっしゃいませ……、ちっ、冷やかしか」


 ナハトの身なりを見て店主は、判断したらしい。

 高級宝石店に一般人の身なりをした、青年が入ってきたから当然と言えば当然である。

 「店主、これを買い取って欲しい」


 ナハトが出したものは指輪だが、魔族の国では当然のように出回っているオパールだが、人間の国ではない代物だった。


「これは、実に美しい代物ですね、これの査定となると、お時間を頂くことになりますので、こちらにおかけになってお待ち下さい。おい、お茶をお出ししろ」

「は、はい」


 店員は慌てて待合席に座るナハトに紅茶とマカロンを出した。

 ナハトが当たり前のようにそれを受け入れ寛いでいると、店主が早足で戻ってきた。

「こちらの品は金貨が九千八百万になりますが、問題ありませんか?」

「構わない」

「ありがとうございます。用意致しましたのでお収め下さい」


 金の入った袋を受け取り、空間に収納すると、店主は目を見開いた。


「金が!?」

「お構いなく、では、失礼」


 ナハトが金貨で宿に泊まれば上客が来たと直ぐに宿内に噂が広がった。

 湯浴みを済ませ、レストランへ向かった。


 ナハトが注文したのは『ヴァロアーナのタンシチューとリンタンリゾット』だった。


 ヴァロアーナは巨大な白蛇で、リンタンは香草だ。

 ナハト曰く、どちらも斬新な味がした、だそうだ。


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