高校生退魔師と高校生魔法少女
沙水 亭
第1話 退魔師と魔法使い
俺の名前は
一応高校一年生や!
そんで今は……
「ほんほん……そりゃあえらい大変な目に遭ったな〜」
『ホントあの社長!!許せません!』
理由あって幽霊と対話中や。
彼は吉田 璃亜矛、高校生退魔師。
彼の退魔方法は特殊で、幽霊や妖怪と対話し、成仏させる。
「で、この部屋でぽっくり逝ったと?」
今は事故物件で幽霊退治をしていた。
『はい……首吊りです』
「大変やったな……」
『はい……でもあなたと話せて少し心がスッキリしました』
「……あんたはあの世を信じてるか?」
『え?……そりゃあ今死んでますからね、信じますよ』
「あの世ではな、やり直せるんやって」
『やり直せる?』
「あの世で罪を清算してクリーンな状態で転生させる、それがあの世のやり方や」
『な、なぜその話を?』
「今、あんたは誰にも取り憑いてない、今なら恩赦ですぐ転生させてくれるはずや」
『ど、どうやればあの世に?』
「未練を断ち切るんや」
『未練を……』
「そうや」
『私の未練は……あの会社です、私の働いていた会社です!』
「そうか……なら行くで」
「は〜でっかい会社やな〜」
50メートル以上ある高層ビルにやってきた。
『あれ……』
「どないした?」
『私の知ってる会社じゃありません……』
「え?なんやて!?」
『おかしい……道は合っていたのに』
「……会社の名前は?」
『☓☓社です』
「……」
スマホで会社名を検索すると……
「……なるほどな」
『何かわかったんですか?』
「……三年前に倒産しとる、それもパワハラセクハラ、モラハラなどなどの理由で告訴されてな」
『そうだったんですね……』
「決め手となったのは1人の自殺者、その人が自殺した事で社員が立ち上がり、裁判を起こしたらしいわ」
『もしかして……』
「ああ、あんたやな」
『……なんと言ったら良いか……』
「自殺したから……なんて良い話やないでな、でも、あんたの死をきっかけに動いたのが……」
『?』
「ここの社長らしいわ」
璃亜矛がスマホの写真を幽霊に見せた。
『か、彼女が……!』
「知り合いか?」
『はい……私の……幼馴染ですっ……!』
幽霊は涙を流し、倒れてしまった。
「そうか……」
「……君、そこで何をしてるの?」
するとビルから1人の女性が出てきた。
「お、すまんせんすぐ退きますんで」
「……吉岡くん?」
「『!』」
女性はなぜか幽霊の方を見ていた。
「ほぉ、あんた、見えてんのな」
「吉岡くんなの……?」
『由美さん……』
「ああ……」
触れないが、たしかに幽霊を抱きしめていた。
『すまない……』
「いいの……もう……いいの」
『ああ……』
「ええ話やな〜」
璃亜矛ももらい泣きしていた。
『ああ……何だか体が軽い……』
幽霊は次第に中へ浮いていった。
「ま、待って!」
「未練がなくなったようやな」
『はい……ありがとうございます』
「閻魔さんにちゃんと話すんやで」
『はい……』
幽霊は静かに消えていった。
「……まだ……想いも言えてないのに……」
「……なら、手紙でも書いてみ」
「手紙?」
「手紙を書いて焼くんや、そうしたら、きっとあの世に届く」
「……はい」
「……ふぅ、ただいま〜」
「おかえりなさいませ、坊ちゃま」
璃亜矛が家に帰ると老執事が待っていた。
「本日はお疲れ様でした、旦那様からお小遣いです」
「お、売れたんやなあの物件」
璃亜矛の父は不動産の社長で、事故物件を取り扱っている。
「どうでした?怪我や憑かれてませんか?」
「今日はええ人やったから何もされてへんよ、じいやは心配症やな〜」
「ほほほ、そうでしたか」
「じいや、お茶くれへん?」
「かしこまりました」
「ルイボスティーです」
「ありがと」
しかし璃亜矛が一口飲み、顔を渋らせた。
「じいや」
「はい?」
「……レモンティーや……これ」
「おや、私とした事が」
「まぁ、レモンティーも美味しいから飲むけどな〜」
気にせずレモンティーを飲んだ。
夕方
「……は〜日曜日が終わる〜憂鬱や〜」
「ははは!そう言うな、学生時代は楽しまなければ損だぞ?」
ダンディなヒゲを生やしたこの男は璃亜矛の父 吉田
「父ちゃんは今帰り?」
「おう!今日は家族全員で夕飯を食べれそうだぞ〜!」
「え!?マジ!?母ちゃんも帰ってくんの!?」
「おう!ほら、あそこになが〜い車が」
家の前にリムジンが止まっていた。
「は〜さっすがモデル、乗る車も凄いな〜」
「付き合いで乗せられてるそうだ」
「大人って大変やな〜」
リムジンから高身長の女性が出てきた。
「お!母ちゃんやん」
「ふふ、じいやお茶を4つ用意してくれ」
「はっ」
すると部屋の扉が開き、女性が入ってきた。
「母ちゃん久しぶり〜!」
「……リアム!元気〜!?」
このとってもハイテンションな女性は璃亜矛の母 吉田 ステューシー、世界を股にかけるスーパーモデルだ。
「ははは!元気そうだな!」
「ダーリンもね!」
齢40を超えてもラブラブである。
「は〜えらいお熱やな」
「リアムはガールフレンド出来たの?」
「できるわけないやん、幽霊とお話してんねんで?」
「リアムはクールなヤングなのにね〜?最近の子は好みが違うのかしら」
「さぁ?私にもわからん」
「ふ〜ん、あ!じいやお久しぶり!」
「お久しぶりです奥様、お茶をお持ちしました」
「では四人でゆっくり家族団欒といこうか」
「ほほほ、ではお茶菓子をお持ちしますね」
「ワ〜オ!グリーンティーね!」
「はい、奥様には抹茶を、旦那様にはハーブティー、坊ちゃまにはレモンティーを」
「ありがとうじいや」
「感謝の極み」
「……じいや」
「おや?どうしましたお坊ちゃま」
「……ルイボスティーや、これ」
「おや」
「ははは!私のはミルクティーだな!」
「私のはコーヒーね!」
「コーヒーはわかるやろ!なんでや!?」
「歳のせい……でしょうか」
「……じいやで歳って……世の中の老人が泣くで?」
「ほほほ!そうですな!」
「まぁまぁ〜美味しいからいいじゃない」
「では家族団欒に移ろうか!じいやも座るといい!」
「では失礼して……」
「さて……璃亜矛!学校はどうだ?」
「ん〜……特に変わった事はないな」
「好きな子はできた?」
「出来えへんな」
「ほほほ、坊ちゃまは奥手ですからな」
「……なんで俺ばっかなん?」
「みんな璃亜矛が大好きだからだよ」
「ほ〜ん、じゃあ父ちゃんはどうなん?仕事とか」
「順調だよ、璃亜矛のおかげでな!」
「どういたしまして」
輝春は璃亜矛に事故物件の幽霊を除霊してもらい、事故物件を普通の物件より安めに売って稼いでいる。
「ふふふ、流石はオンミョウジの末裔ね〜でも危ない事はしちゃダメよ?」
「大丈夫やって、なんかあってもじいやがおるで」
「ほほほ、お任せを」
「なら安心ね!」
「おや、もうこんな時間ですね、夕食をお持ちいたします」
「「「ありがとうじいや!」」」
「感謝の極み」
その後、璃亜矛は家族団欒をした後、明日に向けて自室へ戻っていた。
「ふ〜……」
璃亜矛の部屋には年頃の男子とは思えないほどスッキリしていた、流行りのゲーム機やコミック、服などもない。
「……」
あるのは少し大きめのベッドと机。
「明日は学校か〜……はよ寝んとな」
疲れていたのかすぐに眠りにつけた。
翌日
「忘れ物はありませんかな?」
「うん!行ってくるわ!」
「はい、いってらっしゃいませ」
じいやに見送ってもらい璃亜矛は学校へ向かった。
私立
国内でも少し高めの偏差値を誇る中高一貫の学校。
「おっはよう!リアム!」
「おうおはよう」
クラスメイトに挨拶をし、自分の席についた。
「(……結構学校にも幽霊はおるんやな、まぁ七不思議とかあるもんな)」
「おはようリアム君」
隣の席の女子生徒が話しかけてきた。
「おはよう
佐々木 南海、学年首席で入学し、生徒会にも所属している。
「ねぇリアム君、何見てるの?」
「ん?天井のシミ」
「シミ?」
「まぁやる事あらへんしな、天井のシミ数えて時間潰してる」
「リアム君って結構変だよね」
「そうか?」
「うん」
「なら変でええよ」
「やっぱ変だよ」
「そうやな」
「……」
南海の目線は幽霊に向いている事に璃亜矛は気づいていなかった。
「は〜六時間授業キッツ〜」
「帰りにステバ寄ろうぜ〜」
授業がすべて終わり、放課後になり部活に行く者もいれば帰る者もいた。
「(さてと、帰ろうかな)」
璃亜矛は部活には所属しておらず帰ることに。
「……ん?」
なぜかカバンを抱えて空き教室に移動する南海の姿を見つけた。
「(なんか急いでそうやな……)」
生徒会室は全く逆方向。
「(好奇心には勝てへんな!)」
空き教室の鍵がいていたので扉を少し開けてコッソリ覗く。
「(どれどれ〜……カバンから何か取り出したな……ぬいぐるみ?)」
黒猫のぬいぐるみを取り出した。
「……誰も見てないよね……?」
「(ごめんな、南海さん……)」
少し罪悪感に襲われた。
「ふぅ……クロちゃん」
「(ぬいぐるみに話しかけとる?……そういう趣味なん?)」
『は〜い』
「(喋った!?)」
なんとぬいぐるみが話し始め、更に動いた。
「(なんやあれ!?付喪神か!?)」
「……今日のノルマは?」
『商店街裏だよ〜』
「(商店街裏?)」
「よし……トランスフォーメーション!」
すると南海の体は淡い光に包まれた。
「(なんやあれ!?)」
すると制服が弾け飛び、下着姿になる。
「(うぉおお!?)」
たまらず除くのを辞め、目を逸らした。
「(……もう大丈夫かな)」
するとリボンやフリルのついた服を纏っていた。
「(魔法少女やん!!?)」
「よし……じゃあクロちゃんよろしく」
『は〜い!いってらっしゃ~い』
すると黒猫と共に消えた。
「き、消えた……?」
空き教室に入るとそこに何もなかった。
「……商店街裏やな」
走って商店街裏まで来ると……
「お!あれは……」
そこには幽霊と南海がいた。
「(幽霊……にしてはカタチがハッキリしてるな……妖怪か)」
「え〜っと……」
『それがターゲットだよ!』
「(あの黒猫浮いてへん?)」
すると南海がステッキを振り上げ……
「『シャイニングストライク!』 」
思いっきり妖怪の頭に振り下ろした。
「(めっちゃ物理!!)」
『〜〜〜!?』
妖怪はサラサラ……と消えていった。
「(嘘やろ!?祓いよった!)」
「ふう……ごめんなさい」
南海は祓った妖怪に謝っていた。
「……根っから優しいねんな……」
『誰!?』
「ヤッバ!!」
口からポロッと漏れていたようで、黒猫に聞かれてしまった。
『ナミちゃん!あっちに人がいるよ!』
「えっ!?」
「(まずい……隠れる場所があらへん!)」
「……誰かいるんですか……?」
「にゃ〜ん……」
「猫?」
「(流石に無理か!?)」
「……なんだ猫ちゃんか」
「『嘘でしょ!?』やろ!?」
「あ!リアム君!?」
「あ!しもうた!ツッコミが!!」
関西のノリが悪さしてしまった。
「な、なんでここに!?」
「え〜っと……」
『ナミちゃん、見られたらマズイよ』
「で、でも……」
「え〜……」
『もう消すしかなくなっちゃったよ』
「ま、待って!」
黒猫が璃亜矛の前までやって来ると……
「な、なんや?」
『君は今起きた事を忘れる』
5円玉を取り出し、ひもをつけて振り子のように動かす。
「……」
催眠術、しかも古典的な。
「……ごめんねリアム君」
『よし!忘れたはず』
「いや、忘れるかい!!」
「『あれ!?』」
「なんでそんなモンで忘れられるって思ってんねん!」
『ナミちゃん!この人凄いよ!ボクの催眠術が通用しない!』
「リアムくん!」
「……大丈夫や、誰にも言わへんから」
「……ホント?」
「ホントや、もし約束破ったら小指でも詰めたるわ」
「さ、流石にそこまでは求めないよ!」
『エンコってやつだね!』
「……んで、なんで陰陽師紛いな事を?」
「……お金稼ぎなの」
「金稼ぎ?」
『ナミちゃんは魔法少女なの、魔法少女は妖怪や幽霊を祓うとボーナスが貰えるんだよ〜』
「ほ〜ん」
『ちなみに今回のお給料は7000円だよ』
「……結構あるな」
「でも私一人暮らしだから……足りない」
「一人暮らし!?その歳で!?」
「うん……」
『ここだとお話には向いてないよ、着替えてお家で話そう』
「そうやな」
「あ、なら私のお家で」
「しっかしそのステッキ便利やな〜、早着替えも出来るんか」
「ま、まぁね」
ステッキを振りかざすだけで魔法少女衣装から制服姿に早着替えする事が可能なのだ。
「ここが私のお家」
「oh……えらい味のあるアパートやな」
とってもボロいアパートに住んでいるようだ。
「どうぞ」
「お邪魔します〜」
『邪魔するなら帰って』
扉の先には女性が待っていた。
「あいよ〜」
お決まり展開。
「って、なんでやねん!」
「ふん!」
南海がステッキで女性を殴った。
「何してんねん!!?」
「今の幽霊だよ」
「え?」
『お!追加のお小遣いだよ〜2000円!』
「よかった、3日分の食費にはなりそう」
「……」
「……で、なんでこないなアパートに?」
「お父さんとお母さんが夜逃げしたの」
「いつ?」
「中学生の時に」
「そん時から?」
「ううん、中学2年生までは祖父のお家に、でも祖父が亡くなってから遺産でここに」
「ほ〜……大変やな」
「うん……でも寂しくはないよ、クロちゃんもいるし!」
『にゃ〜』
「……一つ質問してええ?」
「いいよ?」
「……この物件事故物件やろ」
「うん」
「しかも結構ヤバめの」
「そうだね」
「……天井にキノコの養殖場バリに幽霊生えてんで」
地獄絵図である。
「うわ!お札切れてる……買い足さなきゃ」
「芳香剤やないねんから……」
「どうしよう……」
「どれどれ〜」
璃亜矛がお札を見ると……
「……なるほど、ペンある?」
「あるけど……」
「サンキュー、え〜っと、ここを」
何かを書き足した。
「ほい!」
パーン!と壁にお札を貼ると幽霊が逃げるように消えた。
「これでよし」
「凄っ!!どうやったの!?」
「ふふん」
『……君、普通の人間じゃないね』
「人間やで?」
『いや、普通の人間は幽霊や妖怪は見えないし、お札の効力を足す事もできないよ』
「……鋭い猫チャンやな」
「た、たしかに!」
「俺は陰陽師の末裔でな、昔じいちゃんに色々教わったんや」
『陰陽師か……納得だね』
「ま、秘密はお互い様やな」
「そうだね」
『……ねぇ君』
「ん?」
『ナミちゃんのお友達になってあげてよ』
「え!?」
「ええよ」
「り、リアムくん?いいの?無理しないでいいよ?」
「な、なんでそんな腰低いん?」
「ほ、ほら私……貧乏だし」
「関係ある?それ」
「え」
「それに、俺も南海さんと友達にはなりたいな〜って思ってたんや」
「そ、そうなの?」
「おう」
「リアムくんが良いなら……」
「よし、んじゃあ連絡先交換しよっか」
「あ、私携帯持ってない」
「そうなん?」
「家の固定電話なら……」
「どれ?」
「これ……」
「黒電話!?」
「買い換えるお金がなくて……」
「……待っててな」
璃亜矛は外に出て電話を取り出すと、電話をかけた。
「あ、じいや?」
『はいお坊ちゃま』
「確かウチに使ってない携帯あったよな?」
『ええ、貰い物の固定電話が一つあります、しかしなぜ?』
「ちょっとそれ持ってきてもらえる?」
『かしこまりました』
「ごめんごめん電話しとった」
「いいよいいよ!」
『ふ〜ん……君ってお金持ちなの?』
「え?なんで?」
『ボク猫だから耳がいいんだ』
「お、なら聞こえとったか」
『うん、でもナイショにしておくよ』
「別にええねんけどな」
するとインターホンが鳴った。
「誰かな……」
「たぶん知り合いやな」
扉を開けると固定電話を持ったじいやが立っていた。
「お坊ちゃまお持ちしました」
「お、ありがとう」
「え……お坊ちゃま……?」
「おや?お友達ですかな?」
「そうやねん」
「ほほほ、そうですか」
「あ、じいや電話繋げるの手伝ってくれへん?」
「お安い御用です」
すると手際よく固定電話を取り替えた。
「さっすがじいや」
「おほほほ」
『ふ〜ん……』
「え〜っと電話番号が……はい、メモっておいたで」
「あ、ありがとう……」
「また何かあったら連絡してええでな」
「うん!」
「そろそろ俺帰らなあかんからごめんな〜」
「うん!ありがとう!」
「また明日」
「また明日!」
璃亜矛は家を出てじいやと帰っていった。
「……」
『良かったね、初めてのお友達』
「えへへ……」
『ナミちゃん……メモを見ながらその顔はしちゃダメだよ』
「……ふふ」
「嬉しそうですな」
「ん?まぁな」
「ご両親には秘密にしておきましょうか?」
「そうやな、そうしといて」
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