或キチガイの話
秋野 公一
第1話
大義。男は大義をもって生きなければならない。目先の小銭を追い求めてもいいが、人生で果たすべき目標を持ったほうがいい。女は、目先の娯楽に金を浪費すればいいが、男はそうはいかない。
かつて私の友人だった男の話をしよう。彼は、仮にAとしよう。Aは、風俗狂いの男だった。大学で出会い、私に心酔していたものの、なんというか人間としての素質に欠けている生き物だった。
Aはマッチングアプリで誰々とどこそこに行ったという話を口にしていた。それで彼女ができたこともあるらしい。
いつも臭う口で、私にそのことを教えてくれた。
ただマッチングアプリで遊びつつも、意中の女がいたという。
その女は会社の同期でどうのこうのと言っていたが、あまりよく覚えていない。
結局、その女とAは結ばれなかったという。意中の女がいながらにして、売女にうつつを抜かすのは何と言っても論外だし、目先の快楽に目を奪われるのは女の所業だった。
ここまではまだいい。
私の家に泊まった際に、私がいつも寝ているベッドの上であろうことにもアダルトビデオを見始めたのだ。
ああ、こいつはキチガイなんだと。そう思った。コンプライアンスの厳しい時代に書いていい言葉ではないが、ここではあえて使わせてもらおう。
このキチガイは、イヤホンもなしに垂れ流し、ああこいつ殺されたいのか。と何度思ったことだろう。
キチガイが帰ってから布団を洗い、シーツも洗濯しなければならなかった。
それからしばらくして、私はキチガイと再開した。
キチガイの夢を応援するために、最初のうちは無償で働いた。
しかしながら、友人であっても私のスキルを使うのであれば、それ相応の対価を支払うべきではあった。
あまりにも傲慢で身勝手な人間だったからこそ、最終的には私にも見捨てられてしまったのだろう。
哀れな男だ。
一生、得難い友人を失い、自身の過ちに気づかず、歴史の闇に消えるがいい。
友よ、安らかに眠れ。
或キチガイの話 秋野 公一 @gjm21
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