クラス一の美少女に会話の流れで「朴訥なキャラだって」と言ったら「僕と付き合って」に聞こえたらしく、次の日から彼女面してくるようになった
クラス一の美少女に会話の流れで「朴訥なキャラだって」と言ったら「僕と付き合って」に聞こえたらしく、次の日から彼女面してくるようになった
クラス一の美少女に会話の流れで「朴訥なキャラだって」と言ったら「僕と付き合って」に聞こえたらしく、次の日から彼女面してくるようになった
間咲正樹
クラス一の美少女に会話の流れで「朴訥なキャラだって」と言ったら「僕と付き合って」に聞こえたらしく、次の日から彼女面してくるようになった
「あっ、もうこんな時間かあ。今日はこの辺にしとこっか、
「そうだね」
んふー、と小さく吐息を漏らしながら伸びをする
そんな様さえ絵になっているのだからズルい。
流石クラスの男子の大半から好意を寄せられている、絶世の美少女なだけある。
サラサラの流れるような黒髪。
猫を連想させるクリッとした瞳。
神様が描いたのではないかとさえ錯覚する整った鼻筋。
全身くまなく100点満点ではないパーツが一つもないというスーパーチート女子――それが一ノ瀬さんだ。
一ノ瀬さんみたいな存在がすぐ近くにいると、世の中がいかに不公平かということをつくづく痛感する。
とはいえ、僕は自分が凡人中の凡人だということは重々自覚しているので、嫉妬する気にさえならないけどね。
「でも毎日二人で頑張ってきた甲斐あって、大分形になってきたね!」
「うん、これも全部一ノ瀬さんのお陰だよ」
「いやいや何言ってんの!
「っ! あ、あはは、そうだね」
鼻先にピッと白魚のような人差し指を向けられ、不覚にもドキッとしてしまった。
くぅ!
超絶美少女な上性格まで良いとは、一ノ瀬さんに欠点はないのかよ!?
……まあ、ないんだろうな。
何せ、
――あれは文化祭の実行委員を決めるための、学級会での出来事だった。
「実行委員をやりたいやつはいるか」という担任の
誰がそんな面倒な役回りを進んでやりたいと思うだろうか。
さっさとクジ引きででも決めてくれればいいのになと、窓の外に視線を向けた、その時だった――。
「はいはーい、そういえば
「っ!!?」
隣の席の悪友である
お前マジか!?!?
言っていい冗談と、決して許されない冗談があるだろうッ!!?
今のは確実に後者のほうだぞッ!!!
「何だ、やりたいなら恥ずかしがらずにそう言えよ坂口」
「あ、いや、その」
「じゃあ男子の実行委員は坂口で決まりだな」
「……え」
えええええええええええええ!?!?!?
決まっちゃったあああああああ!?!?!?
「へへっ、頑張れよ渉」
「……テメェ」
悪びれもせず肩をポンポンと叩いてくる篤史に対して、僕の中でハッキリと殺意が形を成していくのを感じた。
……よし、
それがきっと世のため人のためになる。
「後は女子だけだな。女子でやりたいやつはいないか?」
「……あ、あの、私でよかったら」
「「「――!!!」」」
えっ!?!?!?!?
目の前で起きたあまりの出来事に、僕の殺意は綺麗に霧散してしまった。
何とそこで手を挙げてくれたのは、
それ以来今日まで、放課後は毎日一ノ瀬さんと二人で文化祭の出し物について話し合っているのだが、今でも一ノ瀬さんが立候補してくれた時の篤史の顔を思い出すと笑いが込み上げてくる。
FXで有り金全部溶かす人の顔みたいになってたな。
「でもちょっとだけ意外だったなあ」
「え?」
帰り支度をしつつも、一ノ瀬さんが不意に言った。
意外? 何が?
「正直坂口くんてもっと大人しいタイプかと思ってたんだけど、話してみたら凄くユーモアがあって楽しい人だね!」
「は? い、いやいや、そんなことはないよ」
それは買い被りすぎだよ一ノ瀬さん。
「だって篤史からはよくこう言われてるよ」
「え?」
「朴訥なキャラだって」
「――!! ぼ、
「…………ん?」
今、何と?
「は、はわわわわわ。そ、そんな急に告白なんて……!」
「え? い、一ノ瀬さん……?」
告白って何のこと!?
「ああ! どうしよう、夢みたいッ!!」
「一ノ瀬さん? もしもーし?」
一ノ瀬さんは両手を頬に当て、残像が出来るんじゃないかってくらい顔をブンブン振っている。
いったいどうしちゃったっていうんだい一ノ瀬さん!?!?
「……じ、実はね、私も前からずっと、坂口くんのこと、いいなーって思ってて」
「――!」
一ノ瀬さんは耳まで真っ赤にして、俯きながらボソッと呟いた。
よし、ちょっと一回落ち着こうか!
どうやら重大な行き違いが生じているようだねッ!
「こんな私でよければ――こちらこそよろしくお願いします!」
「――!!」
一ノ瀬さんは定規で線を引いたかのごとく、ピシッとした姿勢で頭を下げてきた。
いったい僕は何をよろしくお願いされたのだろう????
お願いだから誰か30文字以内で説明していただけないだろうか????
「ああー、でもでもゴメンなさい!」
「え?」
一ノ瀬さんはまた両手で頬を抑えて、顔をブンブンさせ始めた。
「ちょっと今日は恥ずかしすぎて、これ以上坂口くんの顔見れない!!」
「……一ノ瀬さん」
そう言わずに、一回ちゃんとお互いの目を見て話し合おう?
「だから、今日は先に帰らせてもらうね!」
「えっ!!?」
いや、待ってよ!!
まだいろいろ拗れたままなんだから!!
「じゃーねー坂口くん! また明日ねー!」
「い、一ノ瀬さーーーん!!!」
一ノ瀬さんは光の速さで教室から出ていってしまった。
……一ノ瀬さんは運動神経も抜群ッ!!(現実逃避)
――そして迎えた翌朝。
「……ハァァァ」
僕は深い深ーーーい溜め息を吐きながら、自分の席に着いた。
「おっ、どうしたんだよ渉、ベテランのゾンビみたいな顔して。さては遅くまで違法のエロサイトでも見てたな?」
「お前と一緒にするな篤史」
こいつは本当に欠片も悩みがなさそうで羨ましい。
こちとら昨日のことが頭の中をグルグル回って、ほとんど寝れてないってのに。
――その時だった。
「お、おはよ、
「「「――!!!!」」」
一ノ瀬さん!?!?!?
何故か一ノ瀬さんが、僕を
「あのね、いつも渉くんてお昼は購買でパン買ってるでしょ? でもそれじゃ栄養が偏っちゃうと思うんだ」
「あ、はあ」
一ノ瀬さんは僕のお母さんなのかな?
「だ、だからね、私、渉くんに
「「「――!!!!!」」」
んんんんんんんんんん??????
な、なんでそうなるのでしょうか??????
「ダ、ダメかな?」
「っ!!」
一ノ瀬さんが潤んだ瞳で僕を見つめてくる――!
――嗚呼ッ!!
「ダ、ダメな訳ないよ! こ、こちらこそよろしくお願いします」
「ホントに! じゃあまた昼休みにね!」
「あ、うん」
スキップしながら自分の席に戻っていく一ノ瀬さんの背中を、僕はただ呆然と眺めていた。
「――オイ、説明してもらおうか、渉」
「――!?」
篤史は親の仇でも見るみたいな目で、僕を鋭く見下ろしてきた。
……いや、篤史だけではない。
クラス中の男子全員が、篤史と同じ目で僕を射抜いている。
……むしろ説明してもらいたいのはこっちなんだけど。
――そして運命の昼休み。
「はい、渉くん、あーん」
「えっ!!?」
僕と一ノ瀬さんは、裏庭の人気のないベンチに腰掛けて一ノ瀬さんお手製のお弁当をいただこうとしているのだが、開口一番、一ノ瀬さんが僕に玉子焼きをあーんしてきた(開口だけに)。
マジで昨日からどうしちゃったの一ノ瀬さん????
ドッキリなの!?
手の込んだドッキリなのかなこれは!?!?
「……食べてくれないの?」
「――!!」
一ノ瀬さんはまたしても、ウルウルアイで上目遣いを向けてくる――!
――嗚呼!!!(デジャブ)
「い、いただきます……」
「召し上がれ。はい、あーん」
「あ、あーん」
僕はこれでもかってくらいキョドりながら、玉子焼きを口に収めた。
「どう、美味しい?」
「ふ、ふん、ほいふいほ」
「ふふふ、よかった」
いやでもマジでこの玉子焼き滅茶苦茶美味いッ!!!
回らないお寿司屋さんとかで出てくるレベルなんですけど!?!?
何か一つくらい一ノ瀬さんにも弱点があってもいいと思うんですけどね僕は!?
――ハッ!
その時、今朝方教室で感じたのとまったく同じ殺気が僕を襲った。
思わず殺気がした方向に目線を向けると、茂みの陰から、篤史をはじめとしてクラス中の男子が
ち、違うんだこれはッ!!
僕だって、なんでこんなことになってるのか見当もつかないんだよッ!!!
……おや?
しかもクラスメイトだけじゃなく、リア充を滅殺することに人生の全てを懸けているという噂さえある、隣のクラスの
微居君はバスケットボール程もあるゴツゴツした岩を掲げて、今にも僕に向かって投げつけようとしている――!
あんなもの喰らったら、確実に一発で異世界に転生してしまう――!!?
「はぁー、幸せだなあ」
「――!!!」
その時だった。
あろうことか、一ノ瀬さんが僕の肩にもたれかかってきた――。
ふおおおおおおおおおおお!?!?!?
「まさか本当に渉くんの彼女になれるなんて、夢みたい」
「…………」
……一ノ瀬さん。
……そうだな。
いい加減僕も、現実に向き合わねばなるまい。
どうやら僕と一ノ瀬さんは、
やはり昨日のアレだろうか?
僕が「朴訥なキャラだって」と言ったのが、「僕と付き合って」に空耳してしまったのだろうか……?
だとしたらやっと一つだけ一ノ瀬さんの弱点を見つけたぞ。
――『意外とドジっ子』。
これはマズい。
僕が微居君の岩で異世界へGOする前に、一刻も早く誤解を解かねば……!
言え!!
言うんだ坂口渉16歳!!
「僕と付き合って」というのは、誤解だったと言うんだ!!
「……渉くん、だーい好き」
「――!!!!」
一ノ瀬さんは何かを噛みしめるように、そう呟いた。
…………まあ、誤解を解くのはまた今度でもいっかな!!
クラス一の美少女に会話の流れで「朴訥なキャラだって」と言ったら「僕と付き合って」に聞こえたらしく、次の日から彼女面してくるようになった 間咲正樹 @masaki69masaki
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