「忘却の蝶は夜に恋う」というタイトルを目にした瞬間から、仄暗い夜氣に揺れる重色の蝶を思い浮かべました。物語を拝読し、何度も息を吐き、何度も胸を締めつけられました。雨音や薄墨色の空気が全篇に静かに漂いながら、ノクスとイスカ、それぞれの想いを描いていらっしゃるお筆致に、ただただ感嘆せざるを得ません。
ご執筆全編を通じ、世界設定の繊細さにも心打たれます。
北畠さんの筆致は、直截かつ情緒豊かでありながら、過度な装飾はせず、しかし要所要所で感情の流がほとばしるのが魅力です。
最終盤ではそれまでの伏線が回収され、なるほどそうくるかと感心させられる一方で、まさかのアレやコレも伏線になっていたことに驚かされました。
タイトルの意味はエモく、長い時間をかけて育まれたノクスの想いはとても綺麗で、読後は幸せな気持ちになりました。
恋とは何か──僕もまだ、よくわかりません。ですが答えの一つはこの物語の中にあり、ノクスが教えてくれたような気がします。