魔獣 襲来
狼のような魔獣は耳を塞ぎたくなるような、けたたましい雄叫びをあげた。私は咄嗟に尻もちをついてしまう。
「な、なにこれ…」
(た、立たなきゃ…)
頭では分かっているのに体が言う事を聞いてくれない。その一瞬で魔獣は私に飛びかかってきた。咄嗟に目を瞑ると…。
「防御魔法、無属性」
落ち着いた声が聞こえた。珠月の声だ。恐る恐る目を開けると、私と魔獣の間に立って防御魔法を使っている珠月の後ろ姿があった。
「み、珠月…」
自分でわかるほど震えた声だった。そんな私に珠月は
「大丈夫だよ、落ち着いて」
と柔らかい声で言う。その声が、言葉が私の心を落ち着かせてくれた。急いで立ち上がり杖を手に取る。
「こうなったら…やるっきゃないね」
なぜ魔獣がここにいるのか、なぜこんなことになっているのか、考えなくてはいけない事はたくさんあるけれどそれどころじゃない。
覚悟を決め、珠月と私で魔獣に向かって杖を構えた。
光彩陸離~魔術学院の魔法使い~ 雹華(ひょうか) @hyoka518
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