第14話 女神からの通話、ノイズ入り

朝。

目を覚ますと、空がチカチカと点滅していた。


「……なんだ、また祭りか?」


「違いますリクさん!」

アリシアが神妙な顔で指差す。

「天界通信です! “神様通話”が始まるサインですよ!」


「そんなのあるの!? てか定期連絡なの!?」


ルルが肩で腕を組む。

「異世界的Zoom会議みたいなもんだね」


「神界会議、絶対まともに終わらねぇ!!」



光の輪が空に広がり、声が響いた。


『……おぉ〜い……リ〜ク〜……きこえ……る〜?♡』


「うわ、始まった!」


ノイズまじりの声。

音質は最悪、Wi-Fi2本状態。


「女神さまぁー!? また勝手に通話してますね!」とアリシア。


『あ〜……ノイズ……リクの顔、ピクピクしてて面白い〜♡』


「通信の向こうで笑ってるんじゃねぇぇぇ!!!」



女神の声が突然ハウリングした。

『キィィィィィィィン!! リクのツッコミが、通信干渉起こしてるっぽい!』


「俺の声が電波障害起こしてんの!?」


『理不尽訂正スキルって、電波にも効くらしいのよ〜♡』


「万能ってレベルじゃねぇ!!!」


ルルが冷静にメモを取る。

「つまり、“ツッコミで通信ノイズ除去”も可能と……新機能追加だね」


「やめて、そういうメタ技追加しないで!!!」



『……ところでリク、最近“ツッコミ教”が広まってるみたいね?』


「やっぱりお前の仕業か!!!」


『違うわよ〜♡ 私はただ、“推しを推してるだけ”♡』


「宗教を推し活みたいに言うな!!!」


アリシアがうっとりと手を合わせる。

「女神さま、いつも私たちを見守ってくださってるんですね……!」


『見守ってるっていうか、配信してる♡』


「生放送かよ!!!」



突然、通信がブツッと切れた。


「……あれ、静かになった?」


『――ッ、……ン……理不尽……くる……る……!』


ノイズの中で、微かに女神の声が聞こえる。


『……リク、気をつけて……“理不尽の王”が――』


プツン。


通信終了。


「え、今、理不尽の王って言わなかった!?」


ルルが青ざめる。

「……世界の理不尽を“食う”存在。伝説だよ」


アリシア:「でも、理不尽を食べてくれるなら平和じゃないですか?」


「いや、食べたあと何吐き出すかわからねぇから怖いんだよ!!!」



そこへギルドから伝令が走ってきた。


「リク様ぁぁぁ!! 大変です!!」


「今度は何が爆発した!?」


「いえ、“理不尽が消える現象”が村全体で起きてます!」


「理不尽が……消える?」


アリシア:「いいことでは?」


ルル:「いや、理不尽が消える=この世界の法則そのものが崩壊する」


「やっぱりそうなるのかよぉぉぉ!!!」



女神の声が微かにもう一度だけ聞こえた。


『……リク……もし理不尽の王が動いたら……ツッコミで止めなさい……♡』


「無茶言うなぁぁぁ!!!」


空の光がスッと消え、あたりは不気味な静けさに包まれた。


アリシアが真剣な顔で言う。

「リクさん、これは……次の使命ですね!」


「いや俺、ただの常識人なんだけど!?」


ルル:「常識人こそ最強って、もうバレてるけどね」


「そんな皮肉いらねぇよ!!!」



次回予告:

第15話「理不尽の王、現る」

世界のバグが消え、代わりに“理不尽を喰らう存在”が出現――!

ツッコミ勇者リク、最初で最大の“理屈の通じない敵”に挑む!

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