第11話 森の魔物を調査せよ!
「本日の任務:森の魔物を調査せよ、とのことです!」
アリシアがギルドからもらった紙を掲げる。
だが、その紙の右上にはこう書かれていた。
※報告者は“森の木がしゃべって笑っている”と言っています。
「……絶対ヤバいやつじゃん」
ルルが俺の肩でくるくる回る。
「まぁ、“森がしゃべる”くらいなら序の口じゃない?」
「この世界、何が初級なのか定義あやふやすぎる!!」
⸻
◆ 森の入り口
森に入ると、空気がしっとりしていて静かだった。
木々がざわざわと風に揺れて――
「……くすっ」
「えっ、今笑った!?」
「うふふふふふ〜ん」
「木が歌ってるぅぅぅ!!!」
アリシアは感動して両手を合わせた。
「素晴らしい……自然と一体化してますね!」
「いや音楽祭だよこれ!!」
木の根元から、どすん、と何かが飛び出した。
それは――帽子みたいな頭に、短い足。
「おいおい……まさか」
「こんにちは〜♪ 僕、キノコ族のリーダー、ポルタだよっ☆」
「アイドルかお前ぇぇぇ!!!」
⸻
アリシアが目を輝かせる。
「わぁ、キノコさんかわいい〜!」
「近づくな! 菌類って聞くと嫌な予感しかしない!」
ルルがメモを取りながら呟く。
「一応、毒性あり。触れると“ハイテンション状態”になるらしい」
「ハイテンションって……具体的に?」
「笑いが止まらなくなる」
「お前それギャグウイルスだろ!!」
⸻
ポルタはニコニコしながら言った。
「実はね〜、僕たち森のキノコ族、今“生存の危機”なんだ」
「……急に真面目な話?」
「うん。最近、森の中に“鍋職人”が現れて、僕たちを次々と……」
「煮てんのかよ!!!」
「ううっ、香草と一緒に……トロ火で……!」
「調理工程言うなぁぁぁ!!」
アリシアが真剣な顔で拳を握る。
「リクさん! 助けましょう! 彼らを鍋から救うのです!」
「なんか字面がシュールなんだよな!?」
⸻
◆ 鍋職人のアジト(森の奥)
奥へ進むと、香ばしい匂いが漂ってきた。
小屋の中では、髭もじゃの男がぐつぐつ鍋をかき混ぜている。
「……うわ、ガチ料理人だ」
男が振り向く。
「おっ、新しい具材か?」
「違うわ!!」
「ふむ、いい肉付きだ。煮込み甲斐がありそうだ」
「だから聞けよ!!」
アリシアが杖を構える。
「あなたが森の平和を乱しているのですね!」
「いや平和より食欲を優先してるだけだが?」
「罪深いっ!!!」
――バチィィィン!
光の拳が炸裂。
男は空高く吹っ飛んだ。
「……人間相手でも容赦ねぇなぁ」
⸻
キノコ族が小屋の外からわらわら集まってきた。
「やった! 森が救われたー!」
「これでまた平和に笑えるー!」
ポルタがぴょんぴょん跳ねる。
「お礼に特製の“キノコ鍋”プレゼントするね!」
「自虐的すぎるだろ!!!」
⸻
鍋を囲んで休憩中。
アリシアは幸せそうに微笑んだ。
「平和っていいですねぇ……」
ルルがスープを味見して言う。
「うん、美味しい。あと5分煮たら最高だった」
「プロのコメントやめろ!!」
俺は空を見上げた。
――今日も雲が女神の顔をして笑っている。
「なぁ、女神。俺の人生、どこでバグったんだ?」
『最初から♡』
「やっぱりかぁぁぁ!!!」
⸻
次回予告:
第12話「村祭りと爆発する神輿」
平和な村の祭り……のはずが、聖女の祈りで神輿が空を飛ぶ!?
ツッコミ勇者、ついに“神格レベルの理不尽”と対峙する!!
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