五つ星の約束

三毛猫のポチ

プロローグ 五つ星の約束

 その夜、空は泣き出しそうなくらい澄みきっていて、星が、落ちてきそうなほど近くにあった。


 田んぼの真ん中の、小さな丘の上。

 寝転がった5人の子どもたちは、手を広げ、口を開けて、星空に見惚れていた。


「なあ、あの星、なんて名前だっけ?」

 「北極星だよ。どこにいても、道しるべになるんだってさ」

 「へえ、かっけーな」

 「……でも、あたしは流れ星のほうが好き」

 「願い事とか言っちゃう?」

 「そりゃ言うでしょー! ほら、何お願いする?」

 「決まってんだろ、“一番になりたい”だよ」

 「それ、私も」

 「じゃあ俺も!」

 「みんな一緒かよ……じゃあさ、みんなで一番を目指さない?」


 星空の下、ぽつんと立った小学生の少年が、そう言った。


 「みんなで、それぞれの“星”を見つけて、一番を目指すの。何の星でもいい」

 「陸上でも、サッカーでも、バスケでも、スケートでも、弓道でも?」

 「そう。バラバラでも、みんなが一番になれたら──」


 そのとき、一筋の流れ星が、夜空を横切った。


 「……“五つ星”ってのはどう? 俺たち5人の星」

 「かっこいい!」

 「いいね、五つ星」

 「じゃあ、約束な」


 小さな手と手が、重なっていく。

 指切りなんて野暮なことは言わない。ただ、それだけで、確かに“約束”はそこにあった。


 ──そして、10年の月日が流れた。


 5人はそれぞれ、違う場所で、違う競技で、星を目指している。

 あの日の約束を、どこまで覚えているだろうか。

 今も信じているだろうか。


 でも──


 あの星空の下で交わした約束だけは、

 誰の心の中でも、確かに輝いている。

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