別れ編
第十八話 天使の王国は眠っている
ミシェルとルーシュ、そしてハクマが村へ泊まった翌日、彼らは村人達と共に天使の国へと向かっていた。
「ぼく、全然知らなかったな。本に書いてあったことよりずっと沢山、お話があったんだ」
「そりゃあそうだ。本に書いてあるのなんてほんの一握りだ」
「実際に見て、触れて、話して……初めて俺達はその一部を知るのかもな」
ミシェルに続き、ゆったりとした口調でギルアが呟いた。ハクマは朝の散歩で機嫌がよく、ぶふぶふと鼻を鳴らして楽しそうに進む。そんなハクマの様子に周りは頬を緩めた。
「で、お前らは一体どこまで付いてくるんだ。別に送ってもらわなくてもいいって言ったのに」
いつもの礼だと村人達から貰ったクッキーやパイが入ったリュックを背負うミシェルは言う。
「でも盗賊がいたら困るだろ。一応だよ」
森を出て、日の光を浴びる王国の陰から南へ回り、ミシェルの家へ。そう、行こうとした時だった。
「なんだ、こんな時間に会うとはな」
盗賊だ。しかも数人ではない。数十人が王国の斜面をうろついていた。昨晩村人達に攻撃を仕掛けたはいいものの亡霊に眠らされ、一度は逃げ帰った筈だが懲りていない。ミシェルは鋭い目付きで彼らを睨んだ。そんなミシェルと、ルーシュやハクマを隠すようにしてギルア達は前に出る。
「日の下じゃ石は取れないぞ」
「どうだろうな。まだ地面は湿ってる。少し掘れば出てくるさ」
その言葉にミシェルは更に顔を顰めた。
「非効率的だ」
「亡霊に襲われながら石を取っていたお前らに言われたくないがな」
「それはそっちもだろう」
「あぁ、おかげで何人も眠っちまったよ」
「こっちはお前らのせいで何人か怪我したけどな」
剣呑な雰囲気が流れ、ハクマは怯えて村人達の後ろの方へ逃げ隠れた。散らばっていた盗賊達が集まってきて、ミシェル達を取り囲む。その内の一人……ミシェルの正面にいた男が腰の剣に手を伸ばした時。
「や、やめてよ!」
ルーシュが飛び出していって叫んだ。
「こんな所で争わないでよ!」
「なんだこのガキ。仲間じゃあねえみたいだが」
男はじろりとルーシュを見た。一瞬怯むも、ルーシュは負けずに話をする。
「お、おじさん達、お城の側行ってないよね?」
「城の側? なんだ、その辺に何かあるのか?」
「お墓なんだ」
「墓?」
「天使のみんなが眠ってる。だからそこだけには入らないで。石を取る為に」
「……まぁ、墓荒らす趣味はねぇけどよ。そもそも大戦争で宝は取られてる。大したものは埋まってない筈だ。死体には興味ねえ」
その言葉に一層眼光が鋭くなったミシェルが、リュックを下ろすと村人達の後ろから前に進んでいく。
「それに石は雨で流れてくる。上には行かねえから安心しろよ」
「で、でも争わないで。ここはミシェル達の国なんだ。勝手に入って戦い始めるとか、そんなのはダメだよ!」
「ミシェル? 何だ、天使の名前か?」
ルーシュの言葉に盗賊達はけらけらと笑った。
「天使は絶滅した。今頃みんな亡霊だ。……あぁ、もしかしてお前、昨日の亡霊のこと言ってんのか? だったら頼んでくれよ。俺達の仲間を起こすよう。眠っちまって全然起きねえんだ」
「誰が起こすか」
「ミ、ミシェルッ」
小声で言ったルーシュを退けて一番前に出てきたミシェルは、キッと盗賊達を睨んだ。真っ白な髪と、小さいけれども翼、そして金の目をした彼に盗賊達は目を見開いた。
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