第九話 天使に似た一族
大昔から、この世界には似て非なる二つの種族がいた。天使と人間。片方は翼と超常的な能力を持ち、もう片方にはそれはなかった。ただ、金の目を除き真っ白な見た目の天使に対し、人間の髪や目の色は実に様々だった。茶や黒、赤、金、青、緑……。けれども金の瞳だけは珍しく、そうそう見ることはなかった。ある一族を除いて……。
「俺達一族はみんな金の目だが、それはもう昔っからそうなんだ。そういう血なんだよ。ただまあ、天使の血を引いてるんじゃないかとか天使に似てるとかで、大戦争の辺りから肩身が狭くなった訳だが」
ギルアは苦笑してみせる。
「だから森の中に住んでるの?」
「ああ、ちょうど大戦争の時に越してきたんだ。……天使の亡霊とも結構長い付き合いなんだぜ? 国に入る時は挨拶するんだ」
「毎回眠らされてるけどな」
男達はガッハッハと豪快に笑う。仲間が眠らされることについては気にしていないらしい。
「ぼく、おじさん達って悪い人かと思ってた」
それに一瞬黙ったギルアは眉尻を下げて少しだけ笑った。
「……まあ、亡霊もいい気はしてないと思うが。先祖のおかげで俺達は大目に見てもらってるようなもんだ。だから俺達はそれに感謝して、ちょっと石を貰ったら退散するんだ」
「先祖のおかげ?」
首を傾げたルーシュが、引っ掛かったそれについて尋ねようとした時。ドンドンドン、というドアを叩く音がして、ルーシュの膝の上にいたハクマが立ち上がった。
「誰だ?」
と、ハクマがとことっと駆けていくのでルーシュも後を追う。ガチャリと開いたドアの前にいたのは……
「ミシェル……?」
黒いレインコートを目元まで深く被り、恐らく翼を隠す為にリュックを背負っているのだろう……レインコートの背中側が変に盛り上がっている。
「ルーシュ、例の友達か?」
「う、うん」
ルーシュは答えるが、どうもミシェルの様子が変だと思った。一言も発さないし、俯いていてどことなく落ち着かない様子だ。天使の姿を見られては困るからこうなっているのだろう。
「早く帰るぞ」
聞こえるか聞こえないかのぎりぎりの声で言ったミシェルはルーシュの腕を掴む。ミシェルのすねに顔を擦り寄せていたハクマは、ぶふっと返事をすると出ていこうとする。
「あ、じゃ、じゃあおじさん達、ぼく一旦帰るよ。ズボンはまた明日返しにくるから。急でごめんなさい。お邪魔しま――」
「ちょっと待て」
ギルアの言葉を背に受けて、二人と一匹は立ち止まる。背を向けたままのミシェルを気にしながらもルーシュは「なあに?」と返事した。いつの間にか、皆ドアの近くへと集まっている。
「お前、『亡霊』か?」
その言葉にミシェルがぴくりと反応した時、ざぁっと強い風が吹いて彼のフードがめくれた。白い髪が揺れ、明かりの下、皆の前に晒される。
「……!」
一瞬、世界が止まった。ギルア達の声が次第にざわざわと広がり揺れ始める。
「あんた……天使なのか……?」
「だったら、何だ」
振り向いたミシェルが放った一言。辺りは再び静寂に包まれた。
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