第8話 お出かけ
翌日の午前中、早速約束を果たすことにする。
ちょうど叔父上から肉体回復のために休養を取れと言われたし、明後日からは学校も始まる。
本来のストーリーでは、妹が入学してくる学校だしきちんと確認せねば。
「……ん?」
「どうしたんです?」
隣にいたシノブが、不思議そうに首をかしげる。
その際にポニーテールがゆらゆら揺れ、同時に甘い香りがしてきた。
今更ながら、こいつはとんでもない美少女だなと思う。
「いや、妹の学校をどうしようかなと」
「あぁー、日曜学校には通ってたみたいですけどね。確かに貴族家に来たなら高等学校に入った方が後々はいいかもです。それこそ、お嫁に行く時に」
「嫁にはいかん」
「へっ? ……既に兄馬鹿ですね」
「当たり前だろ」
しばらくは何もしなくて良いと言ってるのに結局、母上の世話を率先してやったりセバスに教わって勉強したりしてる。
毎日俺を出迎えるし、今日なんかお弁当を作る……良い子すぎんだろ。
ただ問題は……ゲームだと、アリスのハッピーエンドが王太子と結ばれる以外に少ないこと。
その辺りについても、考えなくてはいけない。
「うーん、これは読み違えましたかね? いや、それならそれで関係なく……やっちゃいましょ」
「ん? 何か言ったか?」
「いえいえ、なんでもありませんよー」
何か嫌な予感がするので問い詰めようとすると、玄関にアリスと母上がやってくる。
今日は母上の体調も良いみたいなので良かった。
二人はお出かけらしく、ラフな格好に身を包んでいる。
「お兄ちゃん、シノブさん、用意できたよ!」
「ふふ、お待たせしちゃったかしら」
「いえ、問題ありません。では、行くとしましょう」
馬車を用意してあるので、二人を中に入れる。
俺とシノブは御者席に座り、馬を進ませる。
そしてセバスに見送られ、都市の外へと向かうのだった。
無事に門を抜けると、広い街道に出る。
天気も良く、青空が広がっていた。
すると、窓からアリスが顔を出す。
「わぁ……凄いです!」
「確か、外に出るのは初めてだったか?」
「はい! その、ずっと王都の端っこにいたから……」
話によるとアリスは王都の隅にある貧困街で暮らしていたらしい。
そこは犯罪者やマフィアなどが跋扈する危険地区なのだが、良く今まで無事でいられたものだ。
ストーリーが進むまでは生存確定ルートみたいなことだろうか。
「そうか。だったら、今度は街を案内するか?」
「い、良いんですか?」
「それくらいお安い御用さ。それが、お兄ちゃんってもんだ」
「お、お兄ちゃんってすごい……」
そう言いはにかむ笑顔を見せた。
守りたい、この笑顔……我ながら兄馬鹿だな。
そして三十分ほどで目的地である丘に到着する。
すぐ近くには小さな川が流れていて、辺りは見晴らしも良い。
ここは比較的安全な憩いの地として有名な場所だ。
なので遠目には、ちらほらと人々がいたりする。
「結構、人がいますねー」
「まあ、ここらは魔物も滅多に出ないしな」
「ですねー。出たとしても、ここらの魔物なら私達でしたら余裕ですし」
そうだ、今更だがこの世界には魔物がいる。
それはゴブリンだったりオークだったり、通常の生き物とは違う生物だ。
倒すと魔石というものになり、それは魔法が込められるので生活を豊かにしている。
ちなみに魔物を倒すのが、俺達冒険者の主な仕事だったりする。
「ま、魔物が出るの……?」
「安心して良いわよ、アレス達がいるから」
「そうそう。だから好きに過ごしなさい。さて、何からする?」
「う、うん! えっと……川に行きたい!」
「じゃあ、私と行きましょー」
そしてシノブの手に惹かれ、アリスが川辺へと向かう。
俺はその間に椅子やテーブルなどを用意して、母上を座らせる。
「ありがとう、アレス」
「いえいえ」
「……少し話をしても良いかしら?」
「ええ、もちろんです」
ひとまず、俺も対面に座る。
だが母上はアリス達の方を見て黙り込む。
なので、俺もそちらを眺めることに。
「わぁー! 冷たいです!」
「ですねー! それっ!」
「わわっ!? むぅ……やりましたね!」
「うひぁー!?」
シノブが水をかけ、お返しにアリスが水をかけていた。
こういう時、シノブの明るさとコミュ力の高さには救われる。
その姿に癒されていると、母上がおもむろに呟く。
「アリスは良い子ね」
「……ええ、そうですね」
「父親を知らず、母親と辛い生活を送って、そして亡くなった後自分達を捨てた家に……アレス、ありがとう。きっとアレスが言ってくれなかったら、私は彼女に対して酷いことを言ってしまったわ」
そう言い、少し目を伏せる。
本来のストーリーであればそうだった。
でも、その未来は変えた。
「いえ、こちらこそ偉そうなことを言いました。母上だって、父上や兄上を亡くして辛かったのに」
「そうね……一度は愛した人だし、ランドはお腹を痛めて産んだ子だから。でも、私に見舞いも来なかったし……正直言って、そんなに悲しくもないの……薄情な母親でごめんなさい」
「いや、無理もないかと……」
父上は家庭を顧みず、自分が成り上がることしか考えてなかった。
その背中を見て育った兄上も、同じようになっていた。
故にほとんど、俺が母上の世話をすることに。
二人はそれを見て、男が女と世話をするなんてとか言ってたっけ。
「ふふ、貴方は本当に優しい子に育ったわ」
「じゃあ、母上の育て方が良かったですね」
「あら……ありがとう……私、あの子をきちんと育てるわ」
「ええ、俺も手伝いましょう」
母上は自分を妻、そして母親失格だと思ってる節がある。
実際のストーリーではアレスも母親と疎遠になったとか。
だったら、その運命も変えてやる。
前世の分も、出来なかった親孝行しないとな。
死亡フラグ満載の妹の兄に転生した俺、妹を守るために最強を目指す おとら @MINOKUN
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