第6話 シノブ視点
……これは面白くなってきましたね〜。
逸る心を抑えきれず、どんどんと加速していく。
「あの主人様が、本気を出す時が来ましたか」
私が出会った時、まだ主人様はやる気に満ちていました。
新人ながら剣と腕と回復魔法により、新進気鋭の若手冒険者と言われるくらいに。
私はその時に奴隷になりそうなところを助けられ、直感的に仕えるべきだと里の一族としての本能が察した。
「だからお願いして仕えることになったんですけどねー」
でも主人様はいつからか、少しずつやる気をなくしていった。
おそらく、原因は自分の父親や兄でしょうね。
家に帰るたびに、少し落ち込んでましたし。
「きっと、嫌な事を色々言われたんだろうなぁ……あとは主人様は優しいところがあるから、自分が力を発揮したら父親と兄を傷つけると思ったのかも」
私の見る限り、主人様の才能はピカイチだ。
それを何か無理矢理に押さえ込んでる印象があった。
それが今、父親や兄が死んだ事で解放されたに違いない。
「不謹慎ですが、感謝をしないとですね〜」
本人は妹さんのためとか言ってましたが、あくまできっかけに過ぎないでしょうし。
会ったばかりの妹さんに対する熱量ではないですもんね……ただのシスコンに目覚めた可能性ありますかね?
「まあ、理由はともあれ……本気になったなら良いですね」
これで私の願いである、己が主君を成り上がらせることができます。
それこそが、我が一族が求めるものですから。
そして、冒険者ギルドの中にいた目的の人物に飛びつく。
「ガイウスさーん!」
「うおっ!? 何だ、シノブかよ。ったく、驚かすんじゃねえ」
「えへへー、ごめんなさい」
ウンウン、相変わらず山賊みたいな口調と姿のガイウスさん。
顔は厳ついし、身長は190くらいあるし筋肉隆々で、更には斧を担いでいる。
私も最初会った時は、失礼ながら人攫いだと思ったくらいです。
「全然反省してねぇ……んで、どうしたよ?」
「その前に他のメンツはいないんです?」
「リアーナとイージスとなら二人で出かけたぞ。エミリアは何か用が出来たとか言ってたな」
主人様と私にガイウスさん、それに三人を足したのが私達のパーティー『シルバーウィング』だ。
皆実力者……まあ、それなりに出来る面子ですね。
最近は皆で依頼を受けていないので、一部では解散したとか噂になってますけど。
ですが、それももう終わりです。
「あらら、それじゃガイウスさんだけですか。まあ、主人様もガイウスさんにって言ってたし良いかな」
「なに、団長が? ……聞かせてくれ」
「ふふふ、もちろんですよー」
そして私は主人様に妹が出来たこと、そのことがきっかけで本気を出すと言ったことを伝える。
すると、ガイウスさんが邪悪な笑みを浮かべた。
「ククク……ついにか。お人好しの団長のことだ、きっと今まで我慢していたに違いない」
「やっぱりそう思います?」
「そりゃ、そうだろ。いきなりあった妹のためにってのも嘘じゃないと思うが、幾ら何でも本気になるとは思えん。あくまでも、成り上がりたいって気持ちがあったんだろ」
どうやら、ガイウスさんは私と同意見のようですね。
主人様は父親と兄のことを気にしていたので、その可能性は高いでしょう。
だけど今更どうして良いかわからなかったところに、妹さんの件が重なったと。
「ふむふむ、ならば……やることは一つですね?」
「ああ、もちろんだ。俺たちで団長をなり上がらせてやろうぜ! きっと、他の連中も同じように言うはず!」
「ですよね! よーし! 私も頑張るぞー!」
しかし、彼らは知らない。
アレスは本当に妹のためだけに本気を出すことを。
それは無理もない話で、死亡フラグなどわかるはずもない。
こうしてアレスの知らぬところで、成り上がり計画が始まるのだった。
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