第4話 覚悟を決める

さて、最初の関門は突破した。


しかし、問題は山積みだ。


アリスの死亡フラグは、こんなものでは終わらない。


母上がアリスをお風呂に連れて行ってる間に、俺は自室の椅子に座って考える。


「………ふむ」


「難しい顔をしてどうしたんです? 多分、上手くいったかと思いますよー」


「いや、それはそうなのだが……」


「何だか珍しく歯切れが悪いですねー」


どうする? 流石にゲームの世界など説明がつかない。

ただ、妹の死亡フラグを叩き壊すにはシノブの力が必要になる。

何か妹を守れて、それでいてシノブがやる気を出しそうな話は……あったな。


「いや、この先について考えていた。妹……アリスを引き取ったからには、俺は兄として幸せにする義務がある」


「ふむふむ、可哀想ですもんね」


「そこでだ……まずは家を再建しようと思う」


はっきり言って我が家は火の車だ。

元々父上と兄上は散財していたし、貴族とはいえ男爵家は下から二番目の階位である。

ちなみに上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、準子爵、男爵、準男爵となっている。

賠償金を支払った今、ほぼ確実に詰むことに。


「そうですねー。でも、やる気がなかったのでは? ……あぁ、だから妹さんってことですか」


「ああ、そうだ。引き取られた家が潰れるなんてなったら可哀想だ。それに、出来ればひもじい思いはさせたくない」


というか、ストーリー通りなら……潰れている。

実は主人公の兄だが、物語にはほとんど出てこない。

アリスは一年ほど暮らしたのちに、とある出来事で学園に通い寮生活になる。

そしてやる気のない俺と体の弱った母上では家は維持できないだろう。

ストーリー上では本当に序盤で消えていくキャラだ。

そしてアリスは古今奮闘する形で、死亡フラグに立ち向かっていく。


「ほほーん……つまり、本気を出すわけですね?」


「面倒だが、そういうことだ。というわけで、お前には今まで以上に働いてもらうぞ」


「そういうことならお任せください! ふふふ……ついに来ましたか」


何やら不気味な微笑みを浮かべているが……しくったかな。

シノブは亜人国にある忍者の里から来たくノ一で、主君を探すために他国を回っていた。

そして何故か俺に目をつけて、そのまま押し切る形で仕えることになった。

一番の目的は自分の主君を成り上がらせることだとか。

出会ってからずっと、俺に『上の人達排除して成り上がりましょ』とか言ってくるし。


「言っておくがある程度だぞ? 妹を無事に学園に入れたり、大人になったら後はのんびり暮らすからな?」


「はいはい、わかりましたー。それで、何から始めます?」


「絶対わかってない……まあ良い、手っ取り早いのは冒険者ランクを上げることだ」


「確かにそうすればお金も実績も得られますね。では、まずは招集しますか?」


「ああ、ガイウスの奴に伝えておいてくれ」


「了解です! それじゃ、行ってきまーす!」


そう言い、部屋を飛び出していく。

一抹の不安は残るが、ひとまずやる気になったからいいか。

ただモブとしては、出来るだけひっそりとしたいのだが。

その後、お風呂に入って見違えたアリスと会う。

来た時はズボンタイプだったし、服のあちこちが汚れていた。

しかし今は、白いワンピースを着てめちゃくちゃ可愛い。


「す、スースーします……」


「ふふ、私の服を取っておいて正解だったわ。ほら、お兄ちゃんに見てもらいなさい」


「は、はい……お兄ちゃん、変ですか……?」


「あっ……」


次の瞬間、俺の目から涙が溢れでる。

いや、これは正確には俺ではない。

前世の俺が、妹を思い出して泣いている。

そうだ、前世でも洋服を買っては妹が披露をしてきた。


「あわわ……お兄ちゃんって呼んじゃダメでしたか!?」


「い、いや、平気だ……よく似合ってるよ」


「……えへへ」


俺は涙を拭き、アリスの頭を優しく撫でる。


そうだ、自分がモブだとか死亡フラグなど関係ない。


俺が妹のために出来ることを全てやってやる。




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