第36話 物価上昇
兎に角、狩りをしまくる
タカシたちは、獣の皮の高騰が続いているうちに稼げるだけ稼ごうと、ひたすら狩りに明け暮れる日々を送っていた。8人という大所帯になったことで、狩りの効率は飛躍的に向上した。
迷宮に入ると、二つのチームに分かれて狩りを行った。セルマチーム(セルマ、カリン、キーシャ、コリン)は安全地帯の近くに、タカシチーム(タカシ、キャロ、ミオ、メグ)は無限湧きが激しい場所のくぼみに陣取った。
タカシチームは文字通り、モンスターの無限湧きに囲まれた。タカシチームは休む間もなく、ただひたすらモンスターを斬り続けた。溢れ出したモンスターがセルマチームの方へ流れていく。
1時間ほど経った頃、タカシは大きな声でセルマの名前を呼んだ。セルマは「今行きます!」と大声で応え、モンスターを倒しながらタカシチームに合流した。8人全員で残りのモンスターを処理し、タカシは「助かった、ありがとう」とセルマに礼を言った。ミオはため息をつき、メグは楽しそうに笑っていた。
8人でドロップアイテムを回収し、一旦安全地帯で休憩をとった。
休憩後、場所を交代し、今度はセルマチームが無限湧きを楽しんだが、30分も経たずにタカシを呼んだ。タカシチームが合流し、8人でモンスターを全て倒し終えると、カリンが「キツい!」と叫んで笑った。その横ではコリンがへたり込んでおり、キーシャは「危なかった…」と荒い息を整えていた。
タカシは休憩を入れずに場所を元に戻し、再び狩りを楽しんだ。
休憩を挟みながら場所を交代してを繰り返す。途中、タカシチームが安全地帯の近くに陣取っている時、タカシはミオを呼び、キャロとメグを残して二人で安全地帯に戻った。
小部屋に入ると、タカシはミオを抱いた。
「迷宮でするのは格別な何かがあるな」
タカシが感想を言うと、ミオも興奮しているようだった。
キーシャとコリンも9階層で問題なく狩りができるようになった。全員に皮鎧を購入し、戦力補強をする。金が溜まったと思ったらすぐに消えていき、中々貯金は増えない。
新しい奴隷たちを迎え入れてから、早くも4か月が経った。王都では緩やかに物価が上がってきているようだ。シャロンが食料品の値段にぼやいていた。奴隷商のサイロンは、物価上昇が貧困層の生活を直撃し、奴隷に身を落とす者が増えていると愚痴をこぼしていた。
獣人奴隷は増える一方で余り売れなくなってきた。地下の牢屋だけでは収まりきらなくなり、一般の男性奴隷用の牢屋も使われているそうだ。元々そこにいた男性奴隷たちは全員戦地に送られたという。獣人族の男性は捕虜になるくらいなら死を選ぶ者が多く、奴隷になる者が少ないため、獣人男性の入荷はほとんどないらしい。そのため、空いた牢屋は女性の獣人奴隷用に転用されているのだ。
獣人奴隷は犬族と猫族ばかりで、それ以外の部族は見かけない。第一王子の敗戦からの続報はないが、送られている獣人奴隷の数は少なくなっているらしく、戦況は良くないのかもしれないとタカシは感じていた。
迷宮からの帰り道、タカシは獣人たちを先に帰らせ冒険者ギルドに獣の皮を売りに寄った。冒険者ギルドには多くの冒険者がいて賑わっている。その中には獣人奴隷を連れている者もいた。獣人奴隷は荷物持ちとして使われてるようで大きなバッグを背負い手荷物をいくつも持ってる。獣人奴隷達は薄汚れ元気もなく可哀想に見えた。気になって他の獣人奴隷たちも観察すると、どの獣人も大切にされていないようだ。家への帰り道で出会う獣人奴隷の中には、もっとひどい扱いを受けている獣人奴隷が多くいた。
(柄の悪い冒険者の方が獣人に対して優しいのか…)
タカシは怒りを覚えた。なぜこんなひどい扱いをするんだと憤りを覚えた。キャロやカリンは、このことを予期して奴隷紋を入れたかったのかもしれない、とタカシは考えた。
夕食後の雑談で、タカシはシャロンに冒険ギルドで見た獣人奴隷や町ですれ違った獣人奴隷の率直な感想を話した。
「水洗い場に行けば、もっとひどい虐待を受けている獣人がいます」
シャロンの言葉に、タカシは驚きを隠せない。
「もっとひどいって、ありえるのか?」
タカシは「水洗い場に行かないから知らなかった」と、自分に言い訳をした。
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