隠れた首領たちー黙示録 第三///書ー

鮫島竜斗

第1話 受肉

オ、オエエエエエ!!


 ゴミにゲロかける、女が一人。


「く、食うんじゃなかった……!」


 女はゲロゲロとゲロを吐く。


「くそ!くそ不味い思いして落ちたモン食ったら、くっそ腹がイテェ……!おうっぷ!」


 人々は、うわ!といった感じで近づかない。


「チッ!見せもんじゃねーぞ!焼くぞコラ!」


 女が因縁付けて睨み付けると、人々はそそくさと去っていく。


「オゲェエエエエエ!マジ、くせぇ、人間ってこんなもんのために頑張って額に汗して働くのか……」


 女はもう、二時間ぐらい吐き気と戦っている。


 女の奇妙な出で立ちはもう一つ、服が新聞紙なのだ。


「あー服燃えて、新聞紙っての?これは着心地最悪だな!」


 女は一人は毒を吐く。ついでにゲロも吐く。


「あのー大丈夫ですか?」


 男が女に声をかける。


「あ!?大丈夫じゃねーよ!」


 と女が顔を上げると


「あ、すんません」


 以外に……いや仮にミスコンに出てたとしても投票するぐらいの美女で驚いた。


 化粧気はない女の顔と真っ昼間から電柱にゲロを撒き散らし、服は新聞紙。こんなのに声をかけるとはこの男は、かなりの勇者である。


「家、近いんすか?」


 男の疑問に


「宇宙の外にあるよ!しかも帰れねー!」


 女が答える。


「え?あ、はい、で家は……」


 男はひょっとしてこの女は病棟から逃げだした精神疾患者なのでは?と思い。


「ちょっと、会社に連絡しますね」


 と、言う。もちろん男は無職。それらしい着古した安いメーカの服をいていて。とてもこれから会社に向かう感じではない。


「あ?会社?んだそりゃ?」


 少し落ち着いたというよりは、胃袋の中か空になった感じで、吐瀉物は撒き散らさなくなった。


 男は警察に電話を掛け、精神病らしき新聞紙の服を着た女が電柱で吐いていると少し離れた場所で見張りながら電話する。


「おい!」


 女は男に声を怒鳴り声を浴びせる。


「とにかく、お前の家に連れていって、飯食わせろ!クサくないヤツだぞ!」


 いやー、と男は思う。さすがにこれを家に上げるほどの勇者では男はない。


「まあ、とにかく、落ち着いて、どこから着たの?」


 男の問い


「ゲヘナ」


 と女は答えた。


「いや、どこ?」


 ずいぶん変な名前の施設だな。と男が思うと


「もーどこでもいいよ!人間になって、近くの箱からクッサイ飯食ったらこの様だ!全く人間ってのは脆弱すぎる……」


 女がしばらく尻を地面につける。しかしのその間には、吐瀉物が挟まっている!


「うげ!キモチワリ!?」


 女はあわてて飛び上がる、新聞紙が捲れ上がり、女の桃尻が露となる。


 当然このシチュエーションで性的興奮を覚えるものはおかしいが、男はおかしいので性的興奮を覚える。


 しかし、まずいな……。男は思う。このままではなんか俺がこの女を襲っているように見える可能性がある。


 男があたふたしてると。


「どうされましたー」


 警察官が到着する。


「あ、ああこの人がなんか……変なこと言ってるようなので」


 男が言うと


「……詳しい話は交番でしますね」


 と言うと


「あ!?飯食わしてくれんの?」


 女がそう言うと


「お茶ぐらい出しますよ」


 警察官がニコヤカフェイスでそう言う。


………………………。


「身分証提示お願いします」


 警察官がそう言うと


「あ、はい」


 と男は青い手帳を見せる。


「リリだ!親は分からん!とにかく飯だ!腹へって叶わんよ」


 女はリリと自信満々に名乗る


「いや、そうではなく身分証……いや、いいです」


 警察官がちょっとたじろぐと


「はあ、じゃあLILThリリスだ、何がリリだ馬鹿らしい」


 リリスは肩をコキコキ鳴らす。


「リリスさんですね」


 警察官はそう言ってどこかに電話を掛ける。


「おい!お前!名前は」


 リリスは男に言うと


「いや、添島さえじま……っす」


 添島が名乗ると


「着るもんくれね?」


 とリリスが言うと


「いや……」


 と渋ると


「いやーわりぃわりぃ、着るもんは貴重品だよな」


 リリスはニカッと笑う。と


「だから、」


 リリスの影が大きくなる。形が変わる。


 顔がワニのようになり。


 体は毛むくじゃらの獣


 しっぽは蛇。


 角まで生えている。


「力付くで奪うぜ」


 ワニ顔はニヤリと笑う。


「う、う、うワアああ!??」


 添島は驚き、声を上げションベンまで漏らしてしまう。


「!?」


 警察官が即座に異変に気付き、銃をかまえ発砲する。


バン!!が六回響く。


「効くなよんなもん……服くれね?」


 リリスの言葉に添島は服を全て脱ぎ差し出す。


 するとリリスは元に戻ると、


「!」


 警察官がリリスを警棒で打ち据えようとすると

 リリスは素手で警棒を掴み力業で奪い取り。力を誇示するようにへし折る。


「◯◯◯地区◯◯◯交番!危険人物対応応援お願いします!」


 トランシーバーで言った後。


 警察官が焦ったように添島を避難させる。


 添島はフルチンで交番の奥のアクリル板の後ろに逃げ込む。


「特徴、女!歳二十前後。背丈は160前後、長い黒髪!新聞紙を纏っていますが男から青いパーカーと黒いシャツと青いジーンズと奪いました!」


 警察官は柔道五段!しかし簡単には鉄製の警棒をへし折る女にどこまで通用するか?そもそも新聞紙では服を掴んでも意味がない。狙うなら長い髪だ!


 男は構え出方を伺う。


「じゃあな」


 リリスはそう言って、立ち去る。


 警察官はある程度の距離を保ち追尾する。


 その後は、警察官が何人でかかっても投げ飛ばされ。銃弾が直撃しても通用しない。


 大楯構えた機動隊まで出撃要請が出たところで、リリスは走って逃げる。その速度は車より早かった。


  

 

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