第4話 超越の扉〜The Door of Transcendence〜

三つ目の扉“超越の扉”。

光る紋章が脈を打ち、まるで巨大な胸が呼吸しているように、壁が上下していた。


「ついに…最後の試練ね」

マローネが呟く。


「行こう!」

パイタロウが剣を掲げる。


扉が開いた瞬間、閃光が走る。


そこは石造りの闘技場。

整然と並ぶ無数の石像兵たちが、無言のまま剣を掲げた。

その目が赤く光り、一斉に動き出す。


「な、なんだよコレ…軍隊じゃねぇか!」

チェストが叫ぶ。


「構えろ、来るぞ!」

パイタロウが前に出た瞬間、

石像兵たちが地を揺らして突進してきた。


チェストが風のように走り抜ける。

「極風・瞬速残影輪舞斬ッ!!」


残像が幾重にも分かれ、次々と石像兵を斬り裂く。

だが速すぎて、味方の胸元もかすめた。


「きゃーっ!チェスト!なにしてんのよっ!」


「わりぃ! 速さが止まんねぇんだ!」


ミルクが両手を広げる。

「癒しの胸よ、包み込んで、スーパーホーリーキュアー!」

柔らかな光が戦場に降り注いだ。

だが、石像兵のひびが修復されていく。


「えっ!? おっぱいの力が敵まで元気にしてる!?」


「おいデカ乳!方向間違ってるっつーのっ!」


「アンタが急かすからでしょ、チェスト!」


「おれのせいかよ!?」


マローネが前へ進み、胸の前で杖を構えた。

「我が胸に宿る究極の魔力よ、今解き放て…アルテマ!」


紅蓮の魔力がほとばしり、闘技場を覆う炎・水・草・雷の奔流が石像兵を飲み込む。


爆光、轟音。敵が一瞬で吹き飛んだ。だが爆風が仲間をも吹き飛ばした。


「ぎゃああっ!?」

「おいマローネ! 味方も巻き込むなーっ!」

「ご、ごめんなさい…胸の奥の魔力が暴れて…!」


グラマラスが拳を握り、前へ出た。

「なら、拳で受け止めるしかないッ!奥義っ!神龍拳!!」


轟音と共に衝撃波が爆発、石像兵の列が粉砕される!


しかし、その余波でミルクが宙に舞った。

「ひゃああっ!? 姉さーん! 風圧ぅぅ!」


癒しは敵を蘇らせ、魔法は暴走し、速さは制御を失い、拳は嵐を生む。


力が乱れ、胸の鼓動までもが不安定になっていた。


パイタロウが剣を構えようとするが、剣が重くて動かない。

「な…なんだ、この感覚…!」


剣が、胸の鼓動と同じリズムで震えている。


(これが“超越の試練”…。力だけじゃ、意味がないのか!)


ミルクが胸を押さえ、うめく。

「おっぱいが…痛い……心が乱れてる……!」


チェストが歯を食いしばる。

「速さが…止まらねぇ……!」


マローネが苦しげに杖を握る。

「魔力が…胸の中で暴れてる!」


グラマラスが拳を震わせる。

「拳が…暴れだすッ!」


仲間の胸の鼓動が乱れ、戦場の空気が歪んでいく。

そのとき、パイタロウは叫んだ。

「みんな! 胸を信じろ! 力は仲間のためにあるんだッ!」


その声に、全員が顔を上げる。


石像兵が剣を掲げ、一斉に襲いかかってきた。


パイタロウは重たい剣を握りしめ、高らかに掲げ吼える。

「胸の鼓動を合わせろォォォッ!!」


「勇者さまぁ♡ 信じてるっ!」


「……行くぜ、勇者!」


「胸の魔力、ひとつに!」


「拳も心も、ひとつになるッ!」


五人の胸が同時にドクンと脈打った。


その瞬間、地面に光の紋が走り、天へと昇る。


ズンッ!!!。


五人の胸から放たれた光が融合し、天空に渦を巻く。


ミルクの癒しの白、

マローネの魔力の紫、

チェストの疾風の緑、

グラマラスの情熱の紅、

そしてパイタロウの黄金。


五色の光がひとつになり、天上で巨大なフェニックスの姿を成した!

羽ばたくたび、空間が震え、闘技場全体が聖域のように輝いた。


パイタロウが剣を掲げ、叫ぶ。

「これが俺たちの力―ハート・オブ・オッパイ!!」


フェニックスが羽を広げ、静かに舞い上がる。

そして、ゆるやかに旋回しながら石像兵の軍勢へと降下する。

時間が、止まったかのようだった。

石像兵たちは剣を掲げたまま、天を見上げる。

次の瞬間、世界が光に包まれた。

石像兵たちの群れがスローモーションのように崩れ落ちていく。

音もなく砕け、光の粒となって空へ舞い上がる。

粉々になった破片が金色の粉塵となり、聖なる音を響かせながら天へ昇っていった。


ミルクが息を呑む。

「…きれい…光が、敵さえ包み込んでる…」


チェストが剣を下ろし、見惚れる。

「まるで……魂が還ってくみてぇだ……」


マローネが微笑む。

「破壊じゃない……救いの光なのね」


グラマラスが拳を胸に当てた。 

「力が暴れるんじゃない……胸で導くんだ……」


フェニックスはゆっくりと天へ舞い上がり、

光の羽となって消えていった。


残されたのは、静寂と光の粉。


パイタロウが立ち上がる。


パイタロウの髪が金色に輝いていた。


「パイタロウ……髪が……!」

ミルクが息を呑む。


「まるで……伝説の勇者のようね」

マローネが呟く。


パイタロウは静かに剣を地に突き、

穏やかな笑みを浮かべた。


「おっぱいを乱す者は己を滅ぼす。おっぱいを信じる者は、己を超える。」


胸の奥が熱く、暖かかった。

仲間たちは互いの胸に手を当て、鼓動を確かめ合う。

それはまるで命の鼓動ような、穏やかで力強い音。

そして、天井の紋章が静かに輝く中、

パイタロウの金色の髪がふわりと光を放った。 


それは、まだ誰も知らぬ“覚醒”の予兆だった。

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