鮭銀河には鮭がいる

祭煙禍 薬

鮭がもう一度食べたい

 鮭は美味しい。とても美味しい。6次元にも昇る味である。ただ値段が高い、星の子三匹分の値段がする。しかしそれは妥当な値段だ。

 ある日、宇宙飛行士が見つけた銀河、通称鮭銀河。その銀河にはかつてこの星で絶滅してしまった生物、鮭がいた。鮭とはエルリアのような、ケリゥゼのような見た目をした骨のある、昔でいう脊椎生物の魚類科鮭鮭鮭の鮭である。鮭は強い、群れで鮭猟師をイクラにしてしまう。新米鮭猟師がイクラになる確率はケリゥゼを素人が捌き爆ぜさせるのと同じくらいの確率だ、

 そしてイクラになったモノは処置が遅ければ鮭になって、仲間に食べられる。

 そんな恐ろしい鮭が鮭がこの銀河まで来てないのは気候変動の対策を取り続けているから、そして美味しいからだ。鮭は暖気に弱い。


 今でこそ鮭狩りは命懸けだが、古来の鮭は今ほど凶暴ではなく流れるH²O若しくはH²OとNaClを泳ぐだけの ただの食糧だったらしい。しかも安価で庶民的だったとか。

 古来の鮭と遠い場所で似たような進化を遂げたのが現在の鮭だ。現在の鮭の正式名は、ジャーキン・べーサー・ウロノアクザス・シャーケン。鮭と呼ばれているのは、古来の鮭の味と見た目に似ているから生まれた長ったらしい名前の略称だ。

 

 鮭が高い理由は命懸けだからだけではない、鮭の美味さ、含まれる未知の成分サーモラニアの可能性、養殖未確立生物であること、まだ生態系が分かりきっておらず、無いこと、そして…美味しいこと。



 そのような理由から鮭1匹の値段は星の子を優に超えているのだ。星の子一匹ですら、手が届かないのに3匹ならなおさらだ。

 私のような、ブラックホール検食家の端くれでは、一生、口にすることが出来ないだろう。


──それでも私は鮭を食べたい。



 私は一度だけ鮭を口にしたことがある。あの味はとても忘れられない味だった。

その後星崩壊のミスで退職を余儀なくさせられるほどに 

。出来るなら本場の本物の鮭をもう一度食べたい。そう考えていたせいで次の仕事の面接も落ちてしまった、本当に鮭は恐ろしい。


 そんなある時奇妙な噂を耳にした。絶滅危惧種にして猛毒生物であるエルリアを使えば、鮭を食べられると。


 エルリア鉄道の終点駅エルリアはエルリアの一大生息地だ。エルリアは私の財産でも行けない場所ではない。

私の選択は考えるまでもない。


 どうか、終点まで殺されませんように、そう祈りながら私は切符を車掌さんに渡した。



 祈りは通じなかったのか、列車に入ると乗務員が客の一人と揉めていた。

「お客様!列車内にケリゥゼを持ち込むのは下さい」

「いいじゃねえか資格は持ってるんだし」

「期限切れじゃないですか!」

「あぁ?10年くらい誤差だろ」

 頭の中で生存本能が鳴り響いてる気がした。

                   〈続く〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鮭銀河には鮭がいる 祭煙禍 薬 @banmeshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ