第8話
桜の花びらが舞う四月。
藤堂湊(とうどう・みなと)は一人暮らしを始めたアパートの窓から外を眺めていた。
新しい大学生活が始まろうとしている。胸の奥に不安と期待が混ざり合い、落ち着かない。
同じ大学には橘琴葉(たちばな・ことは)も進学していた。二人はまだ恋人として付き合っている。
ただ、受験期のすれ違いを経て、気持ちの温度差があることを湊は薄々感じていた。
琴葉は音楽学部で忙しく、湊は文学部で別々のキャンパス。会う時間は限られていた。
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