第六章 夜明けの声

館は燃え尽きた。

 跡地には、灰と白い花だけが残った。

 夜明けの空に、薄い虹がかかる。


 美咲は一人、そこに立っていた。

 耳の奥で、微かに“瞳の住人”の旋律が鳴る。

 柔らかく、透き通る音。


 「綾、聞こえる?」

 風が答えた。

 (――うん。)


 涙が頬を伝う。

 それは悲しみではなかった。

 “音がまだ、ここにある”という証の涙だった。


 遠く、朝日が館の跡を照らす。

 その光の中で、割れたピアノの鍵盤が風に鳴った。

 “La…La…La…”


 まるで、L’Arc〜en〜Cielが再び始まる合図のように。


 美咲は静かに微笑み、歩き出した。

 もう恐れはなかった。

 歌は、恐怖を超えるものだと知ったから。


 そして――

 その背後で、誰にも聞こえないほどの小さな声が囁いた。


 > 「歌え、少女。虹の向こうに、まだ続きがある。」


fin

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『L’Arc〜en〜Ciel:悪魔の館 ― 黒き旋律の少女たち』 竹内昴 @tomo-korn

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