時の地平線のたもと

ルビー・ミッドナイト

第1話

時の地平線のたもと

虚ろのきざはしがある

君はすべてを見る

理解はできないだろうが


宿命の眼は無数の生を見渡し

漏尽の心は一滴の水に光を見る

両の眼が交わるところに

秘められた真実が息づいている


言葉は空に溶けてやがて無音の祈りとなる

意味は流れ去りただ形だけが残る

けれどその形こそ宇宙が語る言葉


母の子を抱く手の温もりにすでに別れが潜み

別れの瞬間には愛が残る

それでも私たちは

この痛みを「生きている」と呼ぶのだ。


すべての選択はすでに終わっている

けれど選ぶという行為こそが

私たちを「いま」へと引き戻す

未来を知ることは

いまを深く抱きしめること。


夜の闇に光の環が浮かぶ

それは記憶か約束か

始まりのない終わり

終わりのない始まり

私たちはその環の中を

永遠に彷徨いながら

一瞬の煌めきを掬い上げる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時の地平線のたもと ルビー・ミッドナイト @rubymidnight

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ