沈潜
しろたけいすけ
一話完結
血。それは最も身近で特別な体液だ。
この意見に異議を唱える方はもちろんいるだろう。だが、私の中ではこれは絶対的な結論なのだ。何を言われようと覆ることはない。
そもそも人は古来から血は殊に奇矯なものとして扱ってきた。かつて王族や貴族は血縁があるかどうかを非常に重要視した。宗教においては血は穢れとされ、忌避された。遠い昔、生娘の血には若返りと美の効果があると狂信した女王がいた。とある地域では、コウモリの血がてんかんに効くと今でも信じられている。
こういった話は枚挙にいとまがない。血は、人類の間でこんなにも特別視されているのだ。
…だから我が血族も、人間の血を食糧として選んだのかもしれない。
なんて思考を止めると、私は首筋に刺した歯をゆっくりと抜き、すっかり青白くなった女の体を離した。すると、がしゃん、という音とともに女はゴミ箱ごと地面に倒れ込んだ。驚いたネズミが爛々と目を光らせながら路地裏を這い回る。私はほうっと息を吐くと翼を広げ、星のない空へ飛び立った。
沈潜 しろたけいすけ @shirota1k
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます