異世界で途方に暮れても、死に戻り
@take1031
第1話 経験のある目覚め
少女「綺麗でしょ?」
俺に謎の問いを投げる少女。
少女「うぁあぁ…ぁああ…」
嗚咽を漏らしながら泣き喚く。
少女「ーーー!ーーー!」
目の前には淡い澄んだ水のような瞳を持つ少女が、頬に土を付け俺を呼んでいる。
絶望し、慟哭する。
苦虫を噛んだような顔で、俺の頬を撫でる。赤黒く、血なまぐさい手。
少女「ーーーーー…」
そして、何も見えない。
自分でも理解できない字が、脳で錯乱する。目に映るのは『 1031 1124』という数字を受け止める。
受け止める、感覚があると言う事は現実なのかもしれない。
夢で見ている感覚を神経が読み取り、体が勘違いしているのかもしれない。
そもそも、この空間、時間が何時、何処かすらも分からない。
空間が、空間なのかもすら怪しい。
この謎の曖昧な感覚は、デジャブを起こした時の感覚とかなり似ている。
そしてなにより、自分がなんなのか分からなくなっている。
滝「あぁ、またか…」
この言葉が出てきた瞬間、急激な胸の痛みを覚える。混濁する意識。
過激な苦しみ、苦痛に悶え身を塞ぎ込む。バッッと掛け布団を下へと蹴り飛ばし声にならないような叫びを上げ、スッキリしないような朝を迎える。
滝「はぁはぁっ…くっ、はっ…はぁ」
2019年8月2日日曜日 8時21分
外が眩しい。蝉が鳴き刻む。
左手が、何故か痛みの覚える胸を抑えている。
「なんで…な、んでだ?…ゆ、め?にしては…変だ」
何故か心に焦りがある。
恐ろしい夢を見ていたような気がした。
大それた虚しさを感じる夢だったような気もする。
まだ体には感覚が残っている。
両手が、じんわりと熱い。
夢を反芻する。
だが、スッパリと切り捨てられたように、作動した脳は記憶への侵入を強く拒む。
滝「思い出せない…何か凄い夢を…」
頭が痛い。
偏頭痛にしては少し軽い痛み。
布団の蒸れに気付く。
冷や汗で周りがぐっしょりと濡れていた。それ程に恐ろしい夢だったのか?
滝「やばい…だろ…どんな夢を見たらこんなに…」
14時36分
朝の気分のままでは嫌なので美味しいものを食べ気分転換することにした。
滝「ふぅ…」
昼ごはんは〇亀のおろしポン酢うどん。
ポン酢が汁なしのうどんと非常にマッチしており、この蒸し暑い真夏にはピッタリなものだった。
滝「また、食べに来るか」
22時49分
会社帰りの疲れた体で風呂に浸かるのはかなり気持ちいい。
靄のかかった目で水面を眺める。
目が閉じていく。
Oかシイ 何かガちがU
滝「ここは…どこだ?」
思いもしないまま出た言葉に疑問を持たなかった。
何かをつかもうとする仕草で水面に手を伸ばす。
滝「眠い…」
瞼が重たい。
視界がぼやけ、やがて目が塞がる。
1031 1124 また、この数字が脳で錯乱する。目を閉じた瞼の上から微かな光を受けとめる。
?「ぉい…おーい、オーイ!!」
何か…聞こえる。
女の、声?
「早く…起きろや、このやろぉぉおおぉおォォオオ!!!」
大きく重たい音を立て俺の腹に物体が直撃する。
滝「ぐ…フォ、ア!」
腹が痛い。
衝撃により脳が急速に覚醒し目が覚める。
「やっと、起きたか…」
滝「誰だよ…寝てる人にすることじゃ、ないだろ……?!」
ん?俺の家に人?どうゆう事だ?
周りを見渡す限りいつもの家の中では無いことが分かる。
特徴的な中世ヨーロッパのような飾りがある。
滝「…?!」
寝起き独特の抜けている脳が状況整理する。
この女は誰だ?ここはどこなんだ?猫耳?猫耳だと?!
それに…
滝「ここどこだよ!?」
「何言ってんだよお前。それぐらい分かるだろ?」
滝「え。え?え?!その耳なんだよ!」
「はぁ?ふざけてんのか?」
服の面積少なすぎるだろぉ?!
痴女か?!
その服で外に出たら捕まるぞ?!
なにが起きてるんだよ!
「なぁ、そろそろ1発いってもいいか?」
滝「ちょ、と。ちょっと待ってくれ。思い出したいんだ」
俺はそう言い、眉間に寄ったシワをのばしながら思考をめぐらせた。
滝「あの、えと。ここの…名前を教えてくれ」
「あ?んで分からねぇんだよ。
ニイドハガルのアルフェルナ。
これで分かるだろ?」
滝「…分からないな…」
口の中が出血する。鉄の味が広がる。
理解するまでに2~3秒は掛かったであろう。そう、ビンタされたのだ。
滝「何すんだ?!痛いだろ!」
「うるせぇ!ふざけるから痛くしてんだよ!!」
滝「ふざけてねぇよ!」
「ふざけとるわ!」
お互いの息が肌で感じ取れるぐらいの近さで顔を睨みう。
するとまた、猫耳金髪貧乳痴女は俺に手を上げるため、腕を大きく後ろに引いた。
次の瞬間、痴女の手は先程まで後ろの扉の前で腕を組み立っていたクールな女に手首を掴まれる。
貧乳「イルザ、手を離してくれ」
イルザ「アノ、そろそろやめておけ」
イルザ「あと、セシル。お前もふざけすぎだ」
滝「…セシル?」
猫耳の口調が弱くなった?
セシル…誰だ?…俺か?!
いや、明らかに目線はこちらに向いている。美人…しかも胸が…
違う、そんな場合では無い。
滝「セシルって俺の事なのか?」
イルザ「そうだが。何か違ったか?」
アノ「あってるぜ、イルザ。そいつはセシルだ」
滝「俺の名前はちゃんと日本名で滝って名前があるんだけど」
アノ「はぁ?ニホンメイってなんだよ?」
すると猫耳は部屋を出ていく。
何か用があるのだろうか。
この世界は俺のいた世界じゃないことはようやく理解することが出来た。
セシル「この世界で…俺は何を…?」
イルザ「どうした?風邪でも引いて記憶でも飛んだのか?」
そう言うとイルザは俺の額を触る。
触られた時、また1031 1124 と言う数字が頭に浮かび上がる。
とりあえずこの謎の数字を後で聞くとして、まだアノと言う人より話の分かるイルザが今は部屋に俺と合わせ2人しかいない。話すなら今だろう。
セシル「聞いても…いいか?」
イルザ「ん?あぁ、何だ?」
セシル「この世界のことや…アノさんの耳のこと、俺のことも…」
イルザ「その反応…本当にお前は、セシルじゃないんだな…」
この人は信じれる。
俺の状況を心から読みとってくれた。
敬語を使おう。
セシル「信じてくれますか?」
イルザ「…信じれないようなことだが信じないと話が進まないだろ?」
やばい…こんな小さなことで二度目の恋をしそうだ。
信じてくれるってだけでどれだけ安心か。
イルザ「なら、今はタキと言う名前で呼んだ方がいいな」
タキ「ありがとうございます…」
イルザ「これくらい別に問題無い。
礼は要らない。
…まず、この世界の名前を聞いたよな?」
タキ「はい」
一瞬で分かってしまった。
この人の寛大さに誰もが弱気で出てしまう。だから、あの猫耳も口調が弱くなったのだ。
イルザ「この王都の名前は『 ニイドハガル王都のアルフェルナ地方』だ全てが統一されていた原初の呼び名は『 ティアマト帝国』と言う」
ティアマトか…何処か懐かしみを覚えるネームセンスだ。
いや、ネームセンスというか何かの神話に出てきてた名前だよな?
この世界と前の世界の関係性はなんだ…
イルザ「次はアノの耳だな?」
タキ「そうです」
イルザ「あれは、獣人族だ」
や、やっぱりそうか!!
居たんだな!他の世界に獣人族は!
ゲームや小説、漫画だけでは無いぞお前ら!!!
夢はここにある!
イルザ「タキ…お前は…」
やっぱり俺は冒険者なのか?
そうだよな?
イルザ「無職だ」
おい!!!
何してんだよ俺は!
おーい!!!
無職だと?!
現実に帰してくれ!!!
どこにも夢はなかったんだ、ちくしょう!!
タキ「へ?」
奥の扉から何処かで見た事のある『 少女』とアノが入ってきた。
アノ「ユイが帰ってきたぞ」
どこかへ行ったのはそれが理由らしい。
獣人族ということもあり耳がいいのだろうか。
イルザ「ユイか…。今、セシルの中身がセシルでは無い。タキと言う人間なんだがなぜこうなったか心当たりはあるか?」
『少女』は眉間に少しシワを作りゆっくりと目を瞑る。
何か記憶を巡っているのだろうか。
何か違うような気がする…
ユイ「何も心当たりは無いです」
イルザ「そうか…」
アノ「おい、ちょっと待て、本当にこいつはこいつじゃなくなったのか?」
イルザ「恐らくな。いや、そうだろう。それに信じてみなければ話は進まない」
イルザさんのアノの方へと向いていた視線がこちらへと向けられる。
イルザ「説明をしておこう。ユイはお前の妹だ」
タキ「え、えぇ?」
ユイ「ユイ・クォ・テクトですタキさん」
ぺこりと一礼をする。
タキ「あ、はい。よろしくお願いします(?)」
イルザ「…他に何か聞きたいことはあるか?」
タキ「…あの、イルザさん…」
先程から我慢していたがやはり抑えきれない。1031 1124の意味を聞いてみることにした。
イルザ「なんだ?」
タキ「1031 1124 この数字がなんなのか知ってますか?」
この世界で前の世界で使われている言語、数字は通用するのだろうか。
イルザ「1031 1124?」
通用したようだ
だが、イルザさんでも分からないらしい。
首を傾げる。
だが、意外なことに猫耳が答えた。
アノ「1031…そりゃあ、あれだ。えーと、たしか帝国を統一した時の…アルシャード・オスカー・ウェロラムだっけなそいつの生まれた年だったような気がする。
1124は死んだ年だろ。
今のセシルじゃ今が何年か分からねぇだろうから言っておく。
今は、4392年だ。」
そんなにも時が進んでいるのになぜ機械のようなものが見当たらない?
アノ「で、この年数はいつからの年数か分からねぇだろ?
ティアマトが作られた時からだ。」
ユイ「アルシャード…」
ユイがそう呟く。
何か意味深な顔で青く淡い瞳でこちらを見る。
その意味深な顔の意味を聞こうと思ったが心の何かがそれを引き止める。
するとイルザが…
イルザ「アルシャードといえば93は厄災の数字だと言っていたよな?」
アノ「そうだ、しかもその数字はアルシャードが生きた年数だ。
そのせいでアルシャードは厄災の申し子やらなんやらと色々語られてきた。
少し古いが代表的なのが"マキドラル戦記"」
ユイ「その話有名ですよね」
イルザ「知っているのか?」
ユイ「はい、マキドラル関連のモノは何故か記憶にあるんです」
アノ「俺が言うのもなんだけど獣人族って記憶力は凄いんだぜ。多少飛んじまったぐらいじゃ消えねーぐらいにはな。少しは残る。どんな記憶でもな」
記憶が飛んだ?
それに、獣人族?
俺の妹じゃなかったのか?
それに耳も生えていないが。
イルザ「そうだな、ユイは獣人族の親を持っているんだ」
タキ「ということは、俺も獣人族の血を引いてるんですか?」
そういうことだよな?
アノ「お前は違う。親違いの兄だ。100%純血のハガル人だ。でも全部、不確かな事だがな。元々セシル、お前の体と妹ユイの記憶がほとんど飛んじまってる。だから、俺が今言った親違いってのも、そもそもお前が兄貴だってのも予想の話だから、本当か分からねぇ」
あ〜…そうだ。
自分はハガル人だということに違和感を覚えたがここは異世界なんだ、それに今の体は異世界生まれの体。
それに記憶が飛んでるってユイちゃんもそうだけど、気になりすぎる。
タキ「ハガル人は黒髪が多いんですか?」
ユイも黒髪だがよく見ると毛先に金髪が混ざっている。
イルザ「そうだな、ハガルは黒髪獣人は金髪だ」
イルザは銀髪だということはハガル人じゃないのか?
セシル「イルザさんはなんで銀髪なんですか?」
イルザ「…これはアンスールゾーンの人間だからだ」
イルザは言いにくそうに答える。
タキ「アンスール…ゾーン?」
アノ「お、おい。言っていいのか?」
イルザ「あぁ、別にいい。タキ…アンスールゾーンはニイドハガルと戦争していた。そしてアンスールゾーンが敗戦した。故に私は、この王都を歩いていると差別を受ける。ただ、私は昔のような友好関係を築きたいだけなんだがな…」
どこか苛立ちを覚えた。
タキ「…すみません」
イルザさんが差別を受けるという事実を知ったからだろうか?
イルザ「謝るな」
少し違うような気がする。
静謐、時間の流れが遅く感じるほどに空気が重い。
この気まずい空気、前にも経験したことがある 。
ーきがしたー
ーキがしタ?ー
ー犯しイー
目の前に霧が掛かる。
タキ「なんだよ、これ?」
前に見た風呂に浮かぶ自分の膝が見え始めた。
93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93 93
また頭に数字が錯乱する。
1031 1124とはまた違う数字。
滝「なんだったんだよ…今までのは…」
何故か一刻も早くあの世界に戻らなければという気がした。
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