@Seikimatu_0018

第1話 『夢の生活』



起きて…電車に乗って…仕事…帰ったら…疲れちゃって…そのまま朝まで寝る。

これを繰り返すだけの人生…、そんな人生に価値はあるのだろうか。


目を開けるとそこは、都会にずっといた僕には久しぶりの緑と青い空だった。

雲は絵に描いたように大きく綺麗で…緑は生きていることを実感させてくれる。


「このまま夢から出たくないや…」


そんなことを考えて僕はそっと目を閉じる…


あれ…目を閉じても眠れない…。

そう思ってからすぐに起き上がる…


「夢じゃない…」


周りをよく見てみると、想像していたほど田舎ではない…

畑に田んぼ…30分ぐらいあるけばスーパーなんかがありそうな雰囲気だ。


「あんた…今目覚めたのかい?」


ぼーっとしてると少し太った警官が話しかけてきた

警官?夢じゃない?


「これは…夢じゃないのか」


そう僕が言うと警官は笑って言った


「あぁ…来たばかりだね。最初はみんなそう言う…俺もそうだった」


状況が飲み込めず立ちっぱなしの僕を見て警官は手招きをした

とりあえず歩かないと…そう思い重い足を動かす。


「この世界はいいよ…飯も無限にあるし…ゴミも一日放置すればすぐに消える…

怪我も一日で治る!でも人が作ったものは消えるのに少し時間が掛かる…らしい。

俺もよくそこらへんは詳しくないんだ」


あぁ…やばい人だ…最初はそう思ったが彼らの拠点に案内してもらうと

全部簡単に受け入れることができた。


「ここが僕たちの家だ」


そこは田舎特有の広い駐車場があるスーパーだった。

でも駐車場にあるのは車ではなくテント。

火を使っているのか煙が所々から上がっている。


「まるでキャンプ場だろ?でもな電気もあるし…少し歩けば電気屋があるから

そこでDVDを見たっていいんだ…。まぁまずはここのボスに自己紹介を

してもらわないとだがね。スーパーの中の事務所にいるから…」


「あぁ…あの…あなたのお名前は?僕はマサシって言います」


「そういえば自己紹介してなかった!すまないすまない…僕はこの町唯一の警官

ヨウイチって言います。今後もよろしくね」


そういえば警官の人と話したの…初めてかもな…


色んな匂いや音…話し声がする駐車場を抜け、スーパーに入った。

スーパーの中は以外にも綺麗で音楽も流れている…

だが違いと言えば…レジに誰もいないこと…それだけ。


事務所…事務所…一度バイトの面接で似たようなスーパーに来たことがあるから

事務所の場所は何となくで分かった。


「失礼します…」


ノックをしてからゆっくりとドアを開けた


「ん?新入りさんかな?」


そこにいたのは坊主で薄っすらと髭が生えた中年男性だった

とてもじゃないがボスとは思えない見た目だ


「警官の人に案内してもらって…」


そういうと笑顔でうなずいた


「あぁ!ヨウイチくんに案内してもらったんだね!はいはい…

じゃあこの世界がどんな世界か簡単に説明もしてもらったと思うから…

簡単に自己紹介を…自分はクリバヤシ・ヒロオと言います。

この世界に最初に来た人間でここに来て…おそらく20年ぐらいは経ったかな?」


20年!?


「あぁ…その驚いた顔…たぶんこれは聞いてないかな?

この世界では不老だよ不老…どんなに時間が経っても年は食わないし

病気にも肥満にもならないんだ…」


この数時間で何度も驚かされる…本当に夢じゃないんだよな?

夢みたいな世界じゃないか!?ずっと望んでた世界だ!


「とりあえず…はい。これ」


そう言うとヒロオさんはテントとハンマー、釘を渡してくれた。


「テントは…わかるんですけど…釘?テントのペグじゃなくて?」


「ちょっとややこしいんだが…この世界は一日経過するとなんでも元に

戻っちまう…だから釘で適当に固定するとか…鍋だったらずっと使っとくとか

色んな方法で消えるのを防げるんだ…細かくはあまりわからないが」


ヒロオさんが分からないんじゃ誰もわからないんじゃ…


「まぁ。空いてるところ適当にテント置いちゃっていいから…

欲しいものがあったらそのエリアのリーダーに言っといて」


色んな情報を頭に入れて疲れた…そう思って確信した…

この世界は"夢"じゃない



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