ロングレンジ勇者 〜長距離攻撃すぎて勇者様の顔を誰も知らない(なお声はめっちゃ美声)〜

茶電子素

最終話

魔王軍が王都に迫っていた。

空を覆うドラゴン部隊、地を揺らす魔獣の群れ、

そして中央には魔王本人が悠然と構えている。

王都の兵士たちは震え、王様は玉座で祈り、

民衆は「終わった……」と絶望していた。


その時、空から声が降ってきた。


「ご安心ください。勇者です。」


その瞬間、空が割れた。

ドラゴン部隊の頭上に、巨大な魔法陣が展開。

次の瞬間、隕石が降り注ぎ、ドラゴンたちは一斉に爆散。

地上では、魔獣の群れが謎の光に包まれ、静かに消滅。

魔王が「誰だ!姿を見せろ!」と叫んだ瞬間、

彼の頭上に巨大な剣(物理)が落下し、

魔王は「え?」と一言残して潰された。


戦闘時間、約3.7秒。


王都は歓喜に包まれた。

兵士たちは叫び、民衆は泣き、王様は震えながら言った。


「勇者よ……せめて、顔くらい見せてくれぬか……」


だが、空から再び声が響く。


「申し訳ありません。私はロングレンジ専用勇者。接近戦は苦手なので、常に半径300km以上離れた場所から攻撃しております。」


「「「遠すぎるわ!!」」」


魔王軍の脅威にさらされて以降、

初めてみんなの心が一つになった瞬間であった。

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