心臓は泡沫
夕凪あゆ
第1話
君の声が遠く滲んで
街灯の明かり 雨粒で歪んだ
ありふれた夜に沈む僕らは
名前もないまま ただ息をしてた
嘘で繋いだ世界の端っこで
本当を探して 躓いて
触れた指先が 淡く溶けていく
痛みの形だけが やけに綺麗だった
「またね」と言えたら
少しは違ったのかな
呼吸の隙間に 君がいない
それだけで 宇宙が壊れた
眠れない夜を いくつ越えても
消えない記憶が 胸を叩く
泡沫みたいな心臓が
今日も何かを伝えようとしてる
愛だとか、希望だとか
そんな大層な言葉はもういらない
僕はただ、君の影を拾って
自分の闇に縫い付けたかっただけ
色のない街で 独り
夢と現実の境を踏み外す
嘘と真実の狭間に落ちて
僕は僕を見失っていく
ねえ、覚えてる?
互いを一生忘れないって
そんなあの日の約束を
風がさらっていくたびに
心の奥が軋む音がした
心の中で、崩れる世界の音がして
それでも僕は笑えたんだ
君がくれた言葉を反芻して
泡のように 夜に散っていければ
嗤えよ 僕の矛盾を 泣けよ 君の幻と
この痛みすらも 偽物だったとしたら
全て壊してしまいたい
だけどまだ、ここで息をしてるよ
君を失った夜の中で、
何度も何度も、生まれ変わって。
泡沫みたいな心臓が今も確かに動いてる。
この音が止むその時まで、
君を感じていたいんだ。
心臓は泡沫 夕凪あゆ @Ayu1030
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