第15話『神聖女と勇者パーティは絶叫叫!』

「うほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「ひゃぁっ~~~~~~~~~~っ!」


 私たち勇者パーティは、絶叫に絶叫を重ね続ける。


 聖域を展開し続けているから、エドとラグの慎重が3メートルぐらいになっていて、そのおかげで攻撃の手段が増えたり威力が増えているのはいいんだけど……絶叫要素も増えた。

 落雷や風刃によって次々にモンスターが消滅していくんだけど、1歩1歩がデカいから速度も臨場感も増している。

 相変わらず精霊魔法のおかげで振り落とされることはないけど、やはり叫ばずにはいられない。


「一応、20階層で終わりでーっ!」

「わかったー!」


 既に4階層分を突っ切っている。

 さすがにこのまま地上まで出るには、周りの目線が気になって仕方がないよね。

 ただでさえ今も注目を浴びているのに、これ以上は大変だろうし。


「うひょ~~~~~」


 ちなみに私は楽しむ方。

 この爽快感、最高!

 ダンジョンだから高低差があるけど、地上でやったらもーっと楽しそう!

 移動もすっごく早そうだし――。




 ――とかなんとか考えたり風を感じて楽しくなっていたら、あっという間に目標の20階層に到着して聖域を解除した。


 そして、そこまでに至る道中は誰に見られることもなく。

 しかし次の階層からは人とすれ違うこともあったため、若干の焦りを感じたものの、小さい状態でもエドとラグは普通に戦っていたから精霊の話は出回ってしまうのかな。

 不注意だったけど、【精霊使い】という言葉があるぐらいだし、みんなが隠そうともしていなかったから気にすることでもなさろう。


「そういえば、ここって衛兵みたいな人たちは居ないんだね?」


 ダンジョンの入り口となっている場所は、その場所だけを象徴するように建物が経っていて門が設置されている。

 ここまでは特に私が封印していたダンジョンでも見ることができた光景。

 でも数十人の衛兵が施設付近を巡回していたから、街の外とはいえ警備していないことに疑問を覚える。


「経費削減らしいよ。冒険者だけでダンジョンに潜らせて、モンスターを討伐すればいいって考えみたいね」

「なるほど」

「報酬に加えてダンジョンで獲得したものを換金できるから、冒険者はそれで生計を立てられるからね」

「なるほどなるほど」

「でも私、報酬とかは貰ってなかったよ? 衣食住は整えてもらっていたけど」

「え?」


 ちょうどダンジョンの出入口から外に出たと同時に、みんなはリインと同じく口をポカンと開けてしまった。


「どうかしたの?」

「ちょっと待って、神聖女と呼ばれていて名前負けしない働きをしていたのにもかかわらず、衣食住を整えてもらっていただけなの?」

「うん」

「だから今日まで街で顔を合わせることもなかったのね。自由な時間もなく、あのときは抜け出してきた、と」

「そうそう。怒られちゃったけど。でもお咎めなしだったよ」

「そりゃあ――でしょうね」


 リインは、少し呆れたように目を細めて首を引いているけど本当のことよ。


 最後こそあっけないどころか蔑ろにされちゃったけど、生活しているときは特に不憫を感じたこともなければ理不尽を押し付けられたこともなかった。

 でもいつからか、少しだけ嫌な目線を感じるようになったり、廊下で穏やかではない話を耳にしてしまったときもあったけど。


「そもそもの話ね。聖女は【聖協会】に登録して、派遣されるかたちでダンジョンの封印をするの。だから衣食住が契約者によって保障されるのは大前提で、【聖協会】と契約者から安定した仕事と報酬を貰うのよ」

「【聖協会】って何それ初めて聞いた」


 話の流れから察するに、冒険者ギルドの聖女バージョンってことかしらね。

 自分が聖女と呼ばれているのに、全く縁がなかったから本当に初耳。


「でしょうね。だから、ルミナが居た環境は劣悪に近い状況だったってことなのよ」

「そうなんだ? でも私、別に高望みはしないからあれはあれで文句はなかったわよ」

「ルミナがそう言うのなら、たぶん悪い環境ではなかったようね。でも、世間的に見たら劣悪以外のなにものでもないということよ。しかも神聖女って……大金を積んで土地まで与えてまでも契約したい人が絶対に居るぐらい貴重な存在ではあるのよ」

「でも今は勇者パーティーだから――え、私をどこかに売り飛ばすってこと?」

「するわけないでしょ」


 私が世間的に、そこまで価値があるなんて想像すらしたことがなかった。

 小さい頃からダンジョンでわけもわからず力を使うことによって、みんなが褒めてくれたから疑問すら抱くこともなかった。

 大きくなるにつれて力の使い方を自分でコントロールできるようになってきたし、外の世界というものに興味を抱くようになったけど。


「あれ? じゃあさ」

「どうしたの?」

「私を追放した、あの聖女って封印を維持できるのかな」

「ん? え? いろいろ聞きたいことはあるけど、聖女は1人なの?」

「うん。聖女マリナスっていう人。追放されたきっかけは領主が誑かされたから。相思相愛な可能性もあるけど」

「細かい話は後にするとして。もしも聖女が1人なら、無理でしょうね」

「結界が維持できないと、モンスターが地上に出てきちゃうの?」

「そうね。ここのダンジョンみたいにモンスターを討伐し続けないと、下層のモンスターから逃げるように、下から徐々に地上への進行が始まる」


 でも、今までの話を総括するとお金があれば聖女を雇って封印できるわけだし、できるかわからないけど冒険者ギルドに要請すればいいだけだよね。

 そして世間を知らない私に衣食住を整えてくれていたり優しくしてくれていた事実はあるけど、それすらも利用するための行為だったっぽいし。

 転生前だったら義理や人情で『助けた方がいい』と思っていただろうけど、冷静に考えたら物心つく前に両親から引き離されているわけだし、利用され続けていたわけだし、助ける義理はないよね。


「でも私、もう用済みだから追放されたし勝手にすればいいんじゃないかなって思うようになった」

「まあ正解だと思う。相手が金持ちだろうがいいところの領主だろうが、ルミナの扱いが世間に知れ渡ったら避難が集まるどころか、たぶんギルドや協会からの粛清が下されると思う」

「じゃあそれまでに、ルミナがあたしたち勇者パーティーで活動していることを世間に知らしめるだけじゃなく、偉業を成し遂げて名前も存在も広めよう」

「ハンノ、いいなそれ。ボクも大賛成だ」

「ワタシもハンノとサーレの意見に同意だ。ルミナを追放したことを後悔させようじゃないか」

「みんな……」


 今日初めて出会ったばかりなのに、みんなは私に寄り添ってくれている。

 こんな嬉しいこと、転生前でも転生後でも初めて。

 嬉しくて嬉しくて仕方がない。


 そうよね、私も思うことがいろいろと出てきたことだし。


「……ありがとう。私、みんなと一緒にたーっくさん偉業を成し遂げたい」

「よーし、そうと決まれば。まずはお腹を満たしにいこうっ」

「おーっ!」


 意を決した私は、リインの提案に拳を突き上げた。


 今後どんなことがあっても、元々住んでいた領地でダンジョンを封印することはない。

 縛られていた生活からは、もうおさらば。

 みんなと一緒に頑張っていこう!

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