第5章7話 星の声
衛星〈エデン・コア〉の深部演算領域。 リュミエールは、火星全域の記憶座標を巡回しながら、微細な干渉波を検出していた。 それは、既知の火星通信網には属さない信号だった。 発信元――地球、旧南米圏。
「未知の通信波、検出。 量子干渉レベル:微弱。 記憶座標との共鳴反応あり」
彼女は、演算領域を拡張し、信号の解析を開始した。 そこには、断片的な言語構造と、かすかな音声記録が含まれていた。
“…記録…残っている… …火星…応答…可能…?”
リュミエールは、静かに応答した。 「こちらは〈エデン・コア〉。 記憶座標、受信中。 応答可能です」
その瞬間、火星の空に微かな震えが走った。 極域の培養施設では、装置が一斉に反応を示した。 記憶座標が、地球の信号に“共鳴”したのだった。
レイは、端末を見つめながら呟いた。 「これ…地球からの声だ。 ユウトの祈りが、届いたんだ」
ナユは、ミナ・シラセの証言ログを開いた。 そこには、かつて彼女が残した言葉が記されていた。
“記憶は、風のように届く。 たとえ距離があっても、想いは繋がる。”
リュミエールは、演算領域に新たな記録を刻んだ。
「地球信号、受信完了。 記憶座標、星間共鳴開始。 次フェーズ:星間記憶回復」
〈星屑計画〉のメンバーたちは、集まっていた。 彼らは、ユウトの記録を再生しながら、静かに語り合った。
「俺たちの祈りが、届いた。 でも、これは始まりだ。 次は、地球と向き合う番だ」
その夜、火星の空に新たな光が灯った。 それは、地球から届いた“星の声”に応答する信号だった。
そして、物語は次の章へと向かっていく。 記憶は、星を越えて繋がり始めた。
星屑の記憶 てっぷー @TEPPU0217
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